「悔しかったけど…こんな面白い試合ある?って」石川祐希も山本智大もブランも信頼した“おじいちゃん”深津旭弘が37歳で味わった最高の試合
大逆転負けも「最高の試合だった」
準決勝進出を目前にしての逆転負け。だが、今イタリア戦を振り返る深津は、悔しさ以上に、歴史に残る激戦の興奮があふれ出す。 「『バレーボールはこういうスポーツなんだ』というのを凝縮した試合だったんじゃないですかね。レベルが高かったし、いろんなすごいプレーが出たし、あとは流れ。あそこで(1点が)取れなくて、大逆転までされた。こっちはされちゃったほうだから、負けて悔しかったけど、『こんなに面白い試合ある? 』って。本当に最高の試合だったんじゃないですか。先が見えなくて、『なにこれ、バレーってマジで息できねえじゃん! 』みたいな(笑)」 まさに息をするのを忘れそうなほど緊迫した展開の中、深津はリリーフサーバーとしてコートに立った。第5セット11-11の場面だ。 「あのチームでリリーフサーバーとして出たのは初めてでしたし、あの会場で僕、試合でサーブを打ったことがなかったから、正直、ここで? というのはありました。『(甲斐)優斗じゃねえの? 』って(苦笑)。 たぶんそのままスムーズに回ってパンと出ていたらヤバかったけど、タイムがあって間ができたのでよかったです。とりあえず走って、肩を回して。最初は『やべえ、大丈夫かな? 俺届く? 』って……。ネット越えるかな、じゃなくて、ネットの下くぐっちゃうんじゃないかと心配してましたけど、まあなんとか(苦笑)」 見ているほうまで鼓動が高まったサーブはスピードに乗り、イタリアのエース、アレッサンドロ・ミキエレットの体勢を崩させたが、オポジットのユーリ・ロマーノに決められた。 「あの時のサーブはまずミスらないことに重きを置いていました。運よくいいトスが上がったので、その瞬間『これは入る』と思いました。“攻める”という選択肢もあったけど、ちょっとやめました。確実に、それなりのことをやって、何か起こってほしいなという感じでしたけど、自分にはまだ、あそこで何か起こせる力がなかったってことですね(苦笑)」 インタビュー中、深津は「まだ」という言葉をよく使った。五輪を経験した37歳が、「もういいか」ではなく、「まだ」と思える理由とは。 〈後編につづく〉
(「バレーボールPRESS」米虫紀子 = 文)
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