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ラグビー日本代表を支えるデータ分析の世界について、錦織圭も在籍していた「IMGアカデミー」アジアトップを務めた田丸尚稔氏が語る

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錦織圭も在籍していた最高峰のスポーツ教育機関「IMGアカデミー」。2019年末までアジアトップを務めた田丸尚稔氏が語る、スタジアム最新事情「世界スポーツ見聞録」。今回は、ラグビー日本代表チームがいち早く取り入れたことで話題になったアプリ『ワンタップスポーツ』を開発・運営しているユーフォリアの共同代表・宮田誠氏へのインタビューをお届けする。 * コロナ禍をきっかけに、スポーツの在り方を根本から見直さざるを得なくなった。“withコロナ時代”では以前の社会に戻ることなく、スポーツにおいても新しい様式とは何なのかを考えなければならない。 一つの大きなポイントはテクノロジーの導入だ。トレーニングの世界なら、遠隔で、効率的に行うためにデータ管理ツールの需要がものすごいスピードで増大している。 例えば、日本国内で注目を集めている『ワンタップスポーツ』というアプリは基本的な体調やコンディションを入力・管理するだけでなく、トレーニングの進捗を表す数値をビジュアル化する優れもので、ラグビー日本代表チームがいち早く取り入れたことで話題になった。今回はアプリを開発・運営している(株)ユーフォリアの共同代表・宮田誠氏に話を聞いた。 ――このシステムを開発することになったきっかけはなんですか? 「2012年のラグビー日本代表との出会いです。2019年のラグビー・ワールドカップでベスト8に入る目標がある、と。そのためにフィジカルに関するデータを可視化するツールを作りたいという話が当時の強化スタッフやエディー・ジョーンズ氏からありました。その時点では、ワールドカップ史上で1勝しかできていなかった日本代表でしたが、僕たちにも力になれることがあるのでは、と思えました」 ――そう確信できた理由はありますか? 「まず求められたものが、テクノロジー的に可能だったというのが一つ。加えて“何のためにデータを取るのか”が腑に落ちたのも大きいです。2019年の目標に向けて非常にロジカルなプランがまとまっていました。データを取ること自体は目的になりません。ツールはあくまでツールでしかなく、彼らが目指すものと、それにともなう戦略を理解できるかが一番大事、と感じました」 ――チームが求めていたものはどのような内容だったのでしょう? 「2つの可視化が必要でした。まずは日々の選手の体調=コンディション。もう一つはフィジカルトレーニングに関するデータの推移です。それ以前も代表チームはデータ管理を行っていました。例えばエクセルや紙などを使って記録していたものを一つにまとめ、効率的にビジュアル化していくこと。そして時間をかけることなく、すぐに確認できることが求められました」 ――開発途中で何か障壁はありましたか? 「“スピード感”は、強く求められました。スポーツの中でも究極と言っていいほど身体を鍛える競技で、世界でもトップクラスの指導者の下でトレーニングや試合が行われ、日々結果が更新されていく。その状況に対応しないといけません。データが実際にどう生かされるのか理解する必要があったので、合宿に足を運んで練習を見たり、食堂でどのようなコミュニケーションがあるか観察したり、さまざま取り組みました」 ――現在と、当時のシステムに違いはありますか? 「当初はラグビーのストレングストレーニングに特化した専用システムだったので、かなり特殊だったと思います。2015年のワールドカップで日本代表が活躍してからは、ほかの競技にも一気に広がって、現在の元になるシステムに作り替えました」 ――幸か不幸か、コロナ禍により、遠隔でのトレーニングやチーム管理にも役立つという可能性も大きくなっているように思います。 「代表チームが合宿に集まっている時以外でも、コンディション管理のためにデータ入力を選手に課していたので、遠隔でも大きな役割を果たすことが分かりました。ラグビー以外でも、フィジカルコーチ、トレーナーや他の競技の方が使用するようになって、一人のコーチが大人数の選手に対してデータを管理できるという強みも理解できたり、使用する場が多くなることで、機能の活かし方の広がりが見えてきています」 ――さらに充実させたい機能などはありますか? 「必要な機能はまだまだたくさんあるので開発は続けています。しかし、これからは集めたデータを“どう使うか”がもっと大事かもしれません。さまざまなテクノロジーの発展には製作者の意図を超えて、使う人自身で使い方を発明していくことが幸せな状況だとも思うので、ワンタップスポーツのユーザー会や座談会などを積極的に開くようにしています」 ――それらの活動を通じて気づいたことはありますか? 「最近分かってきたのは、リアルな現場でコミュニケーション能力があるコーチや、チームビルディングが得意なチームが、オンラインやテクノロジーを介した場でも活性化する、ということ。大事なのは現場で何を目指して、それに向かってツールをどう使うのか、です。 ラグビー日本代表からこのシステムを取り入れる時に“足し算ではなく、引き算にしてくれ”と言われたのを鮮明に覚えています。選手にとって必要なことのみにフォーカスし、機能を最小限に絞ることの大事さを教わった気がします。新しいテクノロジーが選手の負荷になるのではなく、リアルに行われることを加速するものでないといけません」

田丸尚稔(たまる・なおとし)

1975年、福島県生まれ。出版社でスポーツ誌等の編集職を経て渡米。フロリダ州立大学にてスポーツマネジメント修士課程を修了し、IMGアカデミーのアジア地区代表を務めた。筑波大学大学院在籍(スポーツウエルネス学・博士課程)。

文/田丸尚稔(初出『Tarzan』No.789・2020年6月11日発売)

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