【MotoGP】最多参戦台数有するドゥカティ。名実ともに強さ備える集団は今後どこまで飛躍するのか
近年MotoGPクラスにおいて圧倒的な参戦台数を有し、昨シーズンは最多優勝数を誇るなど、その勢いが止まらないドゥカティ。2022年以降彼らはこのままの勢いを維持しさらなる飛躍を遂げるのか、これまでの躍進の基軸を追う。 【ギャラリー】MotoGP ドゥカティ ドゥカティは2003年、ロリス・カピロッシとトロイ・ベイリスを起用してMotoGPの世界にデビュー。2006年にはプラマックをスポンサーとし、4台体制へと拡充してその存在感をアピール。2009年には5台、2011年には6台体制へと着実に拡め、2016年にはついに合計8台体制まで事業を拡大させた。 この配分は極めてシンプルだ。企業予算と製造能力に応じ、最も多く投資をし、最も近い関係にあるチームがより優れたプロトタイプ(マシン)を手にすることができる。投資額が少ないチームは1シーズンあるいは時として2シーズン前のバイクで走らざるを得ないというものだった。 これまでMotoGPの世界で圧倒的なマシン台数を誇ってきたドゥカティではあったが、2018年はその台数を6台へと縮小させた。その理由としては、当時プラマックのライダーであったダニーロ・ペトルッチにファクトリーバイクを供給したことが挙げられる。 ドゥカティは2台ものエントリー数を失う形となるも、翌2019年もこの体制を維持した。2020年は6台体制と変わりはしないものの、ファクトリーマシンに跨るライダーは、アンドレア・ドヴィツィオーゾ、ペトルッチ、ジャック・ミラー、フランチェスコ・バニャイヤと4名に増えた。 2021年はミラー、バニャイヤ、ヨハン・ザルコ、ホルヘ・マルティンの4名が最新のデスモセディチを手にし、ドゥカティとの直接契約を果たした。 2018年から2021年にかけて、ドゥカティは前年のプロトタイプ1台につき200万ユーロ(約2億6,000万円/2年落ちはその半額)の収入を得ていた。またこの作戦により、膨れ上がった費用のバランスを取る役割も果たしてきた。 2017年と2018年は、ホルヘ・ロレンソとドヴィツィオーゾの給与だけで2000万ユーロ(26億円)に達していたが、2021年は、ミラー、バニャイヤ、ザルコ、マルティン、エネア・バスティアニーニの間で300万ユーロ(4億円)前後。ここには結果に連動し、ボーナスで支払われた300万ユーロが加わる。だが、このお金はライダーには渡らず、マシンとその開発に投入された。 ドゥカティが課したこの新しい方針は実を結び始め、2021年のチャンピオンシップでは優勝を逃したものの、パドックではデスモセディチはグリッド上で最も戦闘力のあるマシンであると大多数が公言した。ファビオ・クアルタラロと共にライダーズチャンピオンを獲得したヤマハを差し置き、最も勝利を積み重ねたバイクとなったのだ。 2021年にヘレスとル・マンで2勝を挙げたミラーは、11月中旬のヘレステスト終了時、2022年シーズンに向けて自信を見せた。 「2022年のドゥカティは、圧倒的な力を持つバイクになると思う」 「GP21では、GP20の問題が解決されている。今シーズンの終盤には、圧倒的な強さを発揮することができた。明確な改善となり、一歩前進している」 また、シーズン後半のアラゴン、ミサノ、アルガルヴェ、バレンシアの4レースで優勝し、シリーズランキング2位のバニャイヤは以下のようにコメント。 「古いバイクでも既に完璧だったけど、僕たちはさらにこのバイクを完璧なものに改良している」 「これはドゥカティが素晴らしい仕事をした証拠だ。なぜなら、バイクの改善はすでに素晴らしい。これは簡単なことではない」 2021年のチャンピオン、ジョアン・ミル(スズキ)はドゥカティが誇る圧倒的な参戦台数について苦言を呈する。 「正直なところ、多すぎると思う。ドゥカティとタイトルを争う場合、それは8台のバイクと闘うことになるということだからね。とんでもないことだ。常に前にはドゥカティがいる。これは彼らがポテンシャルを持っていることを表しているんだ」 ここに大きな違いがある。かつて、MotoGPには8台のドゥカティ機が存在していた。しかし、それらは圧倒的な強さを誇っていたわけでも、ほとんどがファクトリーバイクだったわけでもない。当時は、よりビジネス的なものであり、利益に繋がるものではなかった。 2022年シーズンは、2021年型のマシン3台(バスティアニーニ、ファビオ・ディ・ギャナントニオ、マルコ・ベッツェッキ)に加えて、5台の”フルファクトリー”バイク(バニャイヤ、ミラー、マルティン、ザルコ、ルカ・マリーニ)が登場する。 アプリリアのアレイシ・エスパルガロはドゥカティの強さを以下のように認めた。 「ドゥカティがチャンピオンシップで最も競争力のあるバイクであることは、僕たち全員が認めている」 「どのライダーもとても速いんだ。理想を言えば、すべてのメーカーに4台のバイクを持ってもらいたい。それはドルナのアイデアだったけど、何らかの理由で実現せずにドゥカティがそのシェアを維持している」 そして、ドゥカティの成長を最も心配しているのは、彼らを相手に王座を守らなければならないクアタラロだろう。 「サマーブレイク後、彼ら(ドゥカティ勢)は大きく前進した」 「彼らは大きな自信を得たんだ。バレンシアは、理論的には彼らにとって不利なサーキットだが、彼らはポールを獲得し、ハットトリックを達成した。来年(2022年シーズン)のことは心配だが、何をするかはヤマハ次第だ」 レプソル・ホンダのポル・エスパルガロも同じ意見で、独自の視点で状況を分析している。 「非常にネガティブだ。チャンピオンシップの話ではなく、自身の利益の話でいうとね」 「ドゥカティはとてもよく動いているし、このまま進化していけるとしたら、僕たちにとっては悪いことだ。今年(2021年シーズン)一年、多くのドゥカティが優勝を争ってきたが、2022年はさらに2台増える」
German Garcia Casanova