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「アーティストは声をあげろ」。社会にコミットするのは当たり前のことだ<Kダブシャイン氏>

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HARBOR BUSINESS Online

アメリカのアーティストが抱く「義憤」

―― アメリカではアーティストたちが積極的に政治問題や社会問題について語っています。アーティストがデモに参加することも珍しくありません。 Kダブ:僕はアメリカにいたことがあるのでよくわかりますが、アメリカのアーティストたちの多くは自分のファンの悩みや苦しみを何とかしてあげたいと思い、ファンの思いを代弁することが自分の仕事の一つだと考えています。学生や、若者のファンが多ければ、彼らが学校や社会でおかしいと思っていることを、直接的でなくとも比喩などを使って表現します。彼らは「あなたたちの痛みはわかるよ」と言うだけで終わらず、ファンと一緒に怒るんですよ。自分を応援してくれているファンが辛い目にあっていると、感情移入して寄り添い、一緒に怒るんです。「義憤」と言ってもいいかもしれませんね。  これはマドンナもそうですし、U2のボノもそうです。テイラー・スウィフトのようにアイドル視されているアーティストでもそうです。彼らがファンの悩みを汲み取って曲を作ると、みんな影響力のある人たちだから、多くの人が耳を傾けますよね。それによって現実が動き、そこで生まれた新たな現実に基づいてファンがまたアーティストに何かを求めていくという、言うなればシーンとファンの間で共同作業が行われているのです。  もちろんアメリカのアーティストたちも、最初に社会問題や政治問題に関して発言したときは、「なんだあいつは」「いったい何様だ」と言った誹謗中傷もあります。しかし、何度も繰り返していると、「このクリエイターは社会に積極的にコミットする人なんだ」と理解され、変な言い方ですが、格というかステイタスが上がります。特にそのアーティストの立場で発言することが難しいようなことを発言したときは、みんなから賞賛されます。  アメリカ人がここまで社会にコミットするのは、自由を至上価値としているからです。彼らは自分たちを抑圧したり搾取するなど、自分たちの自由を侵してくるものに対してすごく敏感です。それから、自分の考えを自由に表現したいという思いも強いですね。彼らは何も意見を持っていないと見られることを嫌がります。だから、どんなにつまらない意見だったとしても、とりあえず自分の意見を自由に言って、それを否定されたり馬鹿にされたりする中で、どんどん学んでいくわけです。  アメリカがいかに自由を尊重しているかは、新型コロナウイルスに対する反応にもあらわれています。先日、海外のアーティストたちが世界保健機関(WHO)と協力し、自宅から曲を配信するコンサートを開催しました。このコンサートのメッセージは、「医療従事者たちが自分の役割を果たしてくれている。だから、私たちも自分の役割を果たさなければならない。それは家にいることだ」ということです。  外出を禁じられることは、自由を制限されるということですから、自由を至上価値とするアメリカにとっては大きな問題です。だけど、それは単に外出を我慢しろということではない。将来また自分たちが自由に行動できるように、いまは自分の役割を果たすということです。多くのアメリカ人がこの考え方を受け入れています。この自由の持つ求心力は舐めてはならないと思います。

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