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芸人の演技力の「カギ」とはなにか 原田・塚地~第七世代を分析

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コロナ禍の影響で、春ドラマは新作が延期され、過去の名作が再放送されている。 こうしたドラマの大半で、お笑い芸人が重要な役を担っている。 「コロナでも生き方は変えないよ」73歳高田純次が明かす人生哲学 例えば放送が延期となった日本テレビ『未満警察 ミッドナイトランナー』では、ネプチューンの原田泰造が刑事役でハードボイルドな演技を見せる予定だった。 同じく日テレ『ハケンの品格2』では、ドランクドラゴンの塚地武雅が部長役で登場する。 現在放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』でも、ナインティナインの岡村隆史が、菊丸というミステリアスなキャラクターを好演している。 今や“一作品に一芸人”の感があるドラマ界での芸人の存在感。 では、現時点では誰が高く評価されているのか。 何故かくもお笑い芸人が重用されるのか。 そして芸人の演技は今後どう変わっていくのかを考えてみた。 ◆演技達者ランキング インターネット調査のパイルアップ社は、マーケティングリサーチ用の登録モニター6000人から1200人を抽出し、「テレビドラマで演技が最もうまいと思うお笑い芸人」のアンケート調査を実施した。 それによると、原田泰造と塚地武雅が1~2位となり、3位以下を大きくリードした。 そして3位のビートたけしから、6位の劇団ひとりまでは定評のある芸人が並んだが、今回は7位に岡村隆史が入った。これまでちょい役で数回ほどドラマに出演した程度の岡村が、大河ドラマに抜擢されランキング入りを果たした。『麒麟がくる』の影響力の大きさを示すエピソードと言えよう。 女芸人では、イモトアヤコが10位に入った。 ここ数年で連続ドラマに出る機会に恵まれ、みるみる頭角を現している。日テレ『世界の果てまでイッテQ!』の高視聴率も相まって、イモトの存在感はどんどん高まっているようだ。 ◆男女年層別ランキング 今回の調査で興味深いのは、単なるランキングにとどまらず、男女年層別の支持が見える点だ。 例えばイモトアヤコは、全体では10位だが女性10代では1位に輝く。 やはり『イッテQ』が小中高生に人気という点が大きい。さらに日テレ『家売るオンナ』(16年夏と19年冬)に出演し、やる気のなさと癖の強い白洲美香役がはまり、若年層に強烈な印象を残した点が大きいだろう。 逆に全体で6位だが、男性20~30代でトップとなったのは劇団ひとり。 お笑いタレントだが、司会者・俳優・声優・作家と幅広く活躍する。俳優としてはフジテレビ『電車男』で、主人公(伊藤淳史)のオタクの師匠格として強烈な印象を残した。 劇団ひとりは、他にもNHK大河ドラマに2度出演し、伊藤博文にジョン万次郎と全く異なるキャラクターを好演している。さらに小説『青天の霹靂』を執筆し、その映画化で監督・脚本を務めるなど、才能の幅は定評がある。 逆に中高年に高く評価されているのは、ビートたけし・塚地武雅・原田泰造の3人。 ビートたけしは言わずと知れた漫才ブームの火付け役で、お笑いビッグ3の一角を担う。80年代から数々のドラマや映画にも出演しているので、俳優としても大御所の大御所だ。 主演では宗教団体の教主・暴力団の組長・歴史に残る犯罪者・落語の名人・本人役など、役者としてこれだけ多様な演技をこなした俳優はいない。 しかも映画でも、自ら監督する作品に出演すると共に、名監督の数々の映画にも出演している。 出演本数の多さと役の多様さから、高評価となるのは当然だが、なぜか若年女性の支持がない。毒舌と下ネタ、最近の滑舌の悪さが災いしたのか、結果として全体3位に甘んじている。 男性50代・60代・女性40代で首位、女性50代・60代で2位となったのが塚地武雅。 “ぽっちゃり&ブサイク”キャラで、彼の右に出る者はいない。大河ドラマや朝ドラをはじめ、日テレ『花咲舞が黙ってない』、テレビ朝日『緊急取調室』などの人気ドラマで、名バイレイヤーを担ってきた。 男女10代を除くと、幅広い層で高く評価されている点が、総合2位の実力と言えよう。 そして総合1位は原田泰造。 女性50代でぶっちぎりのトップ。他に女性60代・30代・20代でも首位、他の層でもほぼベスト3に顔を出している。 「かっこいい」「イケメン」の声もあるが、大河ドラマ3回、朝ドラ1回に出演する他、連続ドラマでも何度も主役を演じている。またネプチューンとして数々のバラエティにも出演しており、これが幅広い層でのベスト3につながっていそうだ。 ◆なぜお笑い芸人か? お笑い芸人は、漫才にしろ、コントにしろ、ものまねにしろ、ストーリーも演技もわかりやすさが基本となる。 さらに本を書き、演出のプランを考え、実際に演ずるまで、全てを自分でこなす。 しかも演ずる場合、観客を前にすることが多いが、場の雰囲気を掴み、大勢を熱中させる力量が問われる。 間の取り方、客の反応に応じた即興、そして長すぎず短過ぎない時間管理。 要は“時間と空間の支配力”が問われるのが芸人なのだ。その意味で、お笑いの世界で、のしてきた芸人は、場数を踏み、自分を磨いて来た分だけ、俳優としての演技もこなせる可能性が高い。 「“演出される”ことが、こんなに心地よいもの」と語った芸人がいた。演技だけに専念できることの幸せを言った言葉らしい。 ビートたけしも、役者として出る際は他の監督・演出家の方針に異論を唱えないらしい。「自分が監督の時に、役者に言われるのが嫌だから」と言っているが、本心は役に徹する方ことで作品全体が良くなると知っているからだろう。 集団で作る作品は、一部を担う人が監督の創造を超える力を発揮すると良い作品になる。 その意味で芸人は、自ら全体を設計する力があるだけに、監督の意図を推し量り、それを超える演技をやって見せられるのではないだろうか。 今回の調査を実施したパイルアップ社の高木章圭メディア研究員は、新たな芸人のドラマ進出に期待するという。 「最近ではイモトアヤコをはじめ、『カンナさーん!』で渡辺直美が主演を務め、『人は見た目が100パーセント』でブルゾンちえみ(現 藤原史織)がメインキャストの一人を担うなど、女芸人の活躍が目立ってきました。『テセウスの船』では霜降り明星のせいや、『恋はつづくよどこまでも』ではミキの昴生が、若年層に高く評価されました。女芸人やお笑い第七世代がドラマの世界を変え始めている気がします」(高木研究員) “時間と空間の支配力”と、従来とは異なる感性の芸人たちが、ドラマや映画の可能性をどう広げていくのか。 新世代の活躍に期待したい。 文:鈴木祐司 (すずきゆうじ)メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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