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美川憲一の1億6千万円借金裁判 メディアは足の引っ張り合いが日常茶飯事だった【芸能記者稼業 血風録】

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日刊ゲンダイDIGITAL

【芸能記者稼業 血風録】#79  貸した金かもらった金か。京都地裁で美川憲一とO氏の裁判が始まった。訴えた側は取材に応じるが、訴えられた側はあまり話したがらないもの。美川とO氏もしかり。口を閉ざす美川に対して、O氏は取材に応じていた。  必然的にメディアはO氏に集中。形勢はO氏有利に傾いていた頃だった。テレ朝の情報番組がO氏の単独取材を画策していた。裁判のきっかけになったO氏の独占インタビューをしたのがフジ。ライバル心むき出しの梨元勝リポーター(故人、写真)がO氏に交渉し、自宅からの生直撃を取り付けていた。O氏は了承した旨の連絡を前日、私にしてきた。  騒動勃発当初、「借りたことももらったこともない」の美川の発言を多くのメディアは支持していたが、私は逆にO氏の話に信憑性ありとしていた。結果、美川は前言を撤回。「借りた金」と認めた。メディアの風向きはO氏に傾いていた。  最初から信じていた私とO氏の間には信頼関係もでき、常に相談してくるまでになっていた。梨元氏の取材の話も事前に相談があれば、簡単だったが、了承後の判断は難しい。  週刊誌は間隔が空く分、テレビ等が報じない中身の濃いものが求められる。梨元氏に先を越されたら、こちらが意図していた記事が台無しになる。「今からでも断るように」と進言したが、「梨元さんなら信頼できると思って、約束してしまった」と言うのも理解できた。やはり梨元氏の名前は大きいと、改めて痛感した。  その夜のうちに私は京都に入り、翌朝6時ごろにO氏宅に行った。番組は8時からの生放送。O氏宅の前から放送するという段取りだった。奥さんも交えて協議。断る方向で同意してもらったが、問題は断り方。苦肉の策で「会社に緊急な案件が発生したので、朝一番で奈良に出かけた」という嘘だった。  時間通りに梨元氏が門前に来てインターホンを押した。奥さんが丁重に事情を話し断った。呆然とする梨元氏の顔が画面に映し出された。  当時のメディアは、足を引っ張ったり引っ張られたり。日常茶飯事だった。私も苦い目に度々あった。例えば、あるリポーターに取材中の女優の話をしたところ、当の女優に「気を付けたほうがいい」と進言されてしまった。  裁判は続いた。注目のO氏出廷の日。地裁前は多くの報道陣であふれ返った。すでに私とO氏の信頼関係はメディアに知れ渡っており、なにかと私に話しかけては探りを入れているのが手に取るようにわかる。閉廷後、地裁から出てきたO氏をメディアが囲む。視線から私に助けを求めているのがわかった。駆け寄り「後でやりましょう」と耳打ち。O氏宅で数時間後に会見することを取り決めた。  一般の人が渦中の人となり、メディアに囲まれて質問を浴びれば、芸能人のようにうまくかわすことなど到底できない。余計なことを口走ってしまう可能性もある。O氏にも同じ不安を持っていた。  会見でも「言っていい話と、してはいけない話」を打ち合わせする時間稼ぎだった。 (二田一比古/ジャーナリスト)

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