Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

外出自粛、警棒片手に「声かけ」の法的な問題は? 「警察の監視が強まる」懸念も

配信

弁護士ドットコム

新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急事態宣言を受けて、都市部の警察がパトロールを強化している。 【写真】縁切り神社のヤバすぎる絵馬 繁華街では、警察官が必要に応じて、街ゆく人々に声をかけて、「外出自粛」を伝えているようだ。ネット上には、そんな様子を映した動画も投稿されている。 一方で、刑事事件にくわしい戸舘圭之弁護士は「一般市民の権利が不当に侵害されるおそれがある」と危惧している。 ●外出しているという理由だけで「職務質問」できない はたして、こうした声かけは、どんな問題をはらんでいるのだろうか。戸舘弁護士が解説する。 「警察官は、外出しているという理由だけで、警察官職務執行法が定める『職務質問』をすることはできません。したがって、警察官は、外出している人を『外出している』という理由だけで、立ち止まらせて、名前を聞いたり、外出の理由をたずねることはできません」 報道によると、警察庁は、具体的な外出目的をたずねないように指示しているということだ。 そもそも、職務質問は、法律によって、異常な挙動があったり、犯罪をしているおそれがあるなどの不審事由のある人だけにすることができる。しかも、その場合でも、警察官は、必要最小限の有形力しか行使できないことになっているのだ。(警察官職務執行法) 戸舘弁護士によると、今回のような声かけは、あくまで新型コロナ対策に伴う一般的意味での「警察への協力要請」という位置づけになるという。つまり、職務質問とはちがうということなのかもしれない。 しかし、ネット上で拡散された動画では、伸ばした警棒を片手に持った警察官が声がけをしており、かなり威圧的な印象も受ける。 「警視庁の内部規則でも、警棒の使用は『必要最小限の使用』に限られています。動画にあったような警棒の使用法は、建前以上に萎縮効果があります。不適切だったのではないかと思います」(戸舘弁護士) ●職務質問に答える義務はないが・・・ あまり知られていないかもしれないが、そもそも職務質問に答える義務はない。警察官に呼び止められても立ち止まる義務もない。しかし、こうした状況では、否応なく、声かけや職務質問されるようなことがあるかもしない。拒否してよいものだろうか。 「法律論としていえば、拒否してもなんの問題もありません。任意なのですから、当然に断ってもよいはずです。ただ、現実は違います。実際上、職務質問を拒否しようとしたら、そのまま帰してくれることはないでしょう。 『やましいことがないなら、答えられるはずだ』と言われて、拒否できない対応に追い込まれてしまいます。このような警察官の対応は、本来、違法ですが、現実には、これがまかり通っています。 それでも拒否した場合、公務執行妨害で逮捕されることもままあります。警察官に手が触れただけで公務執行妨害罪とされたり、もっとひどい場合は、警察官が勝手に倒れ込んで公務執行妨害罪だといわれて現行犯逮捕される危険もあります。 私たち市民の立場からは、警察官が、質問をしてきたら答えざるを得ない状況にさらされているのが現実です。その意味でも、今回の警察への協力要請は文字通りの『協力』以上の意味合いがあると考えます」(戸舘弁護士) ●「警察の監視が強まることは非常に危険だ」 いくら新型コロナ対策だからといっても、そんなふうに警察がやりすぎることは、あまりに弊害が大きすぎるだろう。 「こうした状況なので『どんどんやれ』という意見があるかもしれませんが、政府による協力要請の名を借りて、警察の監視が強まるということは、非常に危険です。一般市民の権利を侵害する口実をあたえかねないからです。 歴史的にも、戦争などの非常時(有事)には、非常時であることを理由に国家権力による人権侵害が横行し、それに対する十分な批判もできない状況にありました。 たしかに、新型コロナ対策として外出を控え、感染を拡大させないための措置をとることは私たちの命に関わるとても大事なことです。 しかし、だからといって新型コロナ対策であれば、どこまでも市民の自由を侵害してもよいのか。やはり、目的と手段が見合っているか、権利を制限する場合も必要最小限の制約なのかという観点から考える必要があります。そのためにも、こういうときだからこそ政府の動きを監視する必要があるでしょう」(戸舘弁護士) 【取材協力弁護士】 戸舘 圭之(とだて・よしゆき)弁護士 民事事件、刑事事件、労働事件等に取り組みながら、ホームレス、生活保護などの貧困問題や追い出し屋対策などの住まいの問題にも取り組んできた。第二東京弁護士会、ブラック企業被害対策弁護団事務局長、首都圏追い出し屋対策会議事務局長、ホームレス総合相談ネットワーク、青年法律家協会弁護士学者合同部会副議長、首都圏青年ユニオン顧問弁護団 事務所名:戸舘圭之法律事務所 事務所URL:http://www.todatelaw.jp/

弁護士ドットコムニュース編集部

【関連記事】