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日本全体が緩やかに劣化 元凶はベテランを排除した小泉改革【ラサール石井 東憤西笑】

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日刊ゲンダイDIGITAL

【ラサール石井 東憤西笑】  仕事柄若い頃からタクシーを利用することが多いのだが、運転手さんの仕事ぶりやサービスの質も随分と様変わりした。乗車拒否やわざと遠回りするなどといった悪徳タクシーは鳴りをひそめ、接客態度や言葉遣いも悪くはない。  しかし運転のスキルはかなり劣化した。行き先を言えば瞬時に最短距離を割り出し、混んでいれば臨機応変に抜け道や裏道に入ってくれるなんてことは昔の話だ。  何より全く道を知らない。昔は行き先さえ言えばあとは本など読んでいてもちゃんと着いたものだが、今はちゃんと道順を指示しなければ到底無理。  「〇〇郵便局を右で」と指示して「はい」と言うから安心していたら、気付くとすっかり通り越して直進していたりするから始末に悪い。だからずっと進行方向を確認していなければならず、スマホも見ていられないし、なによりとても疲れる。  今ではナビも当たり前。中にはずーっとナビを片手で触って絵を広げたり縮めたりして、「どうです、この鮮やかなナビ使い」みたいに自慢げな顔をしてくる強者までいる。  そういう時代といえばそれまでか。いや違う。これはあくまで運転手の質が劣化しているのだ。  そのことによる時間の遅れ、料金のロスによる経済的損失は目には見えないが確実にあるはずだ。  ではこれはタクシーだけの問題なのだろうか。そんなはずはない。ここに表れていることは、どの業種にもどんな職場にも起こっているはずだ。  らちの明かない電話応対。融通の利かない接客。危険を見逃してしまう検査体制。ちょっと考えても枚挙にいとまがない。  日本全体が緩やかに劣化している。こんなことがいつから始まったのか。おそらく竹中平蔵氏が小泉首相と組んだ小泉改革。あのあたりからだ。新自由主義の名の下、あらゆることに精通したベテランの熟練工をリストラし、自分の現場の自分の担当のことしかわからず、しかもすぐに交代してしまう非正規社員を増やした。  そのために、事なかれ主義が蔓延し手抜きが横行し、起きなくていいミスがどんどん起きる。些細なことだが、こういう些末なミスがいつか昨今頻発している爆発や火災などの大事故につながるのだ。  すべてに目端が利くベテランがいれば、事故までのさまざまな小さい兆候に気が付くはずだ。しかしそのような目を持つ者はもういない。これは確実に日本を、そして日本経済を劣化させている。  あの頃クビを切ったほうの人たちが、いまやクビを切られる年頃になってきた。今頃慌ててももう遅い。全てを見通せる熟年のベテランの腕はもう失われ、受け継がれることはなくなってしまった。 (ラサール石井/タレント)

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