なぜ「中小企業の20代男性」の未婚率が異常に高いのか…「大企業勤めと公務員から売れていく」厳しすぎる現実
■実質的に使えるお金が2割も減っている 確かに、額面の給料は増えたのかもしれません。が、実際の手取りに関しては「それほど増えていない」どころか、むしろ昨今の物価高と照らし合わせれば、「去年買えていたものが買えなくなった」という印象を抱く人が多いのではないでしょうか。 そしてその感覚はおおむね間違っていません。 国民生活基礎調査に基づき、20代から50代の各年代とも、物価高を考慮した2023年の実質可処分所得の中央値を計算すると、社会保険料など国民負担率が大きく増えているため、1996年のそれにも及ばないどころか、2割以上も減ったままです。 約30年前より実質使えるお金が2割も減っていることの異常さのほうこそ問題視すべきでしょう。こんな状況だからこそ7割もの大多数が経済的不安を訴えているわけです。 一部では、実質可処分所得は増えているなどという言説もありますが、よくよく見れば、一番低かった時期(リーマンショック直後)を始点として「増えている」としていたり、数値が平均値である場合もあったりするので注意が必要です。 ■「金がなくて結婚できない」に潜む本音 もはや平均値にあまり意味はありません。平均値は、一部の高所得層がいるだけで自ずとあがってしまう虚構の数字であり、実態を反映しません。むしろ格差が広がっている場合こそ、平均値は無意味なものになります。数値に関しては中央値を見るようにするべきでしょう。 約30年前より実質可処分所得が減っている人が半分以上いる上に、7割が自分の将来の経済的不安を抱えている。その反面、そんな不安など抱かない上位3割の層は、「婚姻減」などどこ吹く風で皆婚時代と変わらないレベルで結婚をしていっています。経済的不安を抱える者と抱えない者との格差がそのまま結婚や子を持つかどうかの差に直結しています。 何も裕福な層の足を引っ張りたいわけではありません。日本の「真ん中」と言えるボリューム層である中間層の底上げこそが必要なのです。少なくとも、若者が、不安にさいなまれて行動を委縮させてしまわないような安心材料こそが求められているのではないでしょうか。 中間層の若者が「金がないので……」と言っているのは、「何も安心できないので」という心の叫びなのかもしれません。 ---------- 荒川 和久(あらかわ・かずひさ) コラムニスト・独身研究家 ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、『結婚しない男たち』(ディスカヴァー携書)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(中野信子共著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。 ----------
コラムニスト・独身研究家 荒川 和久