5年ぶりの「関脇貴景勝」が本格的な稽古打ち上げ 相撲は取らず「ぶっつけ本番」も闘争心全開
大相撲の関脇貴景勝(28=常盤山)が、特例となる10勝以上での大関復帰を目指す秋場所(8日初日、東京・両国国技館)を「ぶっつけ本番」で臨む。5日、都内の部屋で四股、すり足、てっぽうなどの基礎運動と、立ち合いの確認を土俵外で繰り返した。師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)は「相撲を取る稽古はしていない。ぶっつけ本番です。とにかく『やるしかない』。本人が一番そう思っているでしょう。(痛めているのは)首だけです」と慢性的な首痛の影響で、かど番だった7月の名古屋場所で5勝10敗に終わり、大関から陥落した弟子の思いを代弁した。 部屋の稽古は6日が休み予定で、初日を前に本格的な稽古はこの日で打ち上げた。8月27日に両国国技館で行われた力士会以来、報道陣に対応した貴景勝は、秋場所への思いを熱く語った。 貴景勝 「(仕上がりは)いい感じです。(首の状態は)だいぶいいですよ。やれることをやってきたつもり。結果が全てなので。結果でしか納得させられない。いい相撲を取っても負けは負け。逆に勝ちは勝ち。精いっぱいやり切って。その先に、お客さんに喜んでもらえるような展開にできたらいいですけど。とにかく集中。やり切るだけ」。 首の状態について、「本来なら休場するような状態か」と問われた師匠は「うーん…」と答えに悩んだ末に、「出るしかないから」と絞り出した。休場できるなら休場した方がいい状態なのは明白。ただ、今場所を休場すれば、大関復帰のチャンスを逃すことになる。再昇進には、新大関の時と同じく「三役で3場所33勝」という目安をクリアしなければならない。首痛は完治せず、常に隣り合わせで付き合いながら3場所好成績を残し続けるよりは、秋場所で10勝する方が可能性が高いといえる。 そんな万全ではない状態でも、貴景勝は「だいぶいい」と言い切り、退路を断った。そんな貴景勝が大事にしているのは何か問うと、再び語り始めた。 貴景勝 「人それぞれ違いますけど、僕は闘争心。それで今までやってきたし。小学校から相撲をやってきて、気合さえ入っていれば褒められていたし、納得してもらえていた。それがうれしくて、気合の入った相撲を取れば喜んでもらえたし。ずっと体も小さかったし、体力で勝てない分、『気合で負けるな』という指導を受けてきた。それがずっと、今につながっている。今場所が特に、というわけではないですけど、体が動いてくれれば。結果が全て。やる相手は同じ。10番目指して10番勝てるような甘い世界ではない。気合だけはしっかりと入れてやっていきたい」。 入門したころから、それどころか入門前から変わらず言い訳はしない。首痛で、以前のように激しく頭からぶちかます立ち合いを、毎日見せることはできないかもしれない。それでも、出場する以上は首痛のことはファンにも気にさせないような相撲を目指す。「関脇貴景勝」は、新大関を目指していた5年前と変わらず闘争心全開。「心技体」で最も重要とされる「心」は、仕上がっている。【高田文太】