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Hello! New World / 新しい世界のために

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エムオンプレス

R&Rの魔法について書き下ろすこの連載が始まったのは2016年12月。 3年後 “LIVE”のない世界に自分たちがいることなど、いったい誰が想像しただろう。 でも、R&Rとは、もともと逆境の中で生まれてきた音楽であり、生き方そのものだ。 新たな音楽の脈動とともに“今を生きる”山口洋からのメッセージ。 【連載】山口洋のSeize the Day/今を生きる vol.85 ご多分に漏れず。アーティストという職業、コロナ自粛期間中はやることがない。曲を書けばいいじゃんってツッコミも、なにかが曲になって湧き出てくるには時間がかかる。かえすがえすも、定期的にステージに立つことによって、こころと身体のコンディショニングとピーキングを調整していたのだと思い知る。 混迷を深める世界。自分にいったい何ができるんだろう? アーティストの友人がインスタライヴでゴキゲンな音楽を流し、人々をリラックスさせていることにヒントを得て、週末にインスタライヴをやってみることにした。人々のこわばった気持ちをほぐすことくらいできそうな気がしたから。僕も愉しむことによって。 STAY HOMEゆえ、スタッフに手伝ってもらうこともできず。考えたあげく、iPhoneひとつで配信することにした。選択肢を拡げたら、ワンオペではコントロールできず、本分が失われると思ったから。音がどう届いているのか、想像するしかできないところが実にスリリングで、「音どう?」と問いかけたら、これまたアーティストの友人が視聴していてくれて「大丈夫!」みたいな。  第1回目はリクエストを募集して、1時間思いきり歌ってみる。すると、どうだろう。iPhoneの小さな画面に日本中から音楽を求めていた声が立ちのぼってくる。正直なところ、ちょっと感動した。音楽を通じて、見知らぬ人々が繋がっていくことにも。 音楽ってやっぱりすごいな。 僕の性格のクドさとも相まって、毎週末インスタライヴをやることが恒例になる。僕も週に一回、リモートで人々と触れあうことによって、暮らしに張りと目的が生まれる。必要とされていると実感することは、生きる上でのたいせつなモチベーション。 行きつけの居酒屋が自粛により営業できなくなっていたから、そこを借りきって、「居酒屋ひろし」と称して配信してみる。店のWi-Fiが脆弱だったから、増強することからのスタートで、かなり難儀だったけれど、実店舗も、配信をきっかけに「酒の肴セット」をテイクアウトで販売してみたなら大好評。住んでいる町と行きつけの店と、日本中を音楽で繋ぐことができて嬉しかった。 真面目な企画にも取り組んでみる。でも、これはワンオペの限界を思い知らされることになる。考えていたプロットが不意の出来事で崩れると、立て直しが効かなくなるのだ。 著作権問題はここでも象徴的。むろんインスタライヴで誰かの音楽を流すことがリーガルではないことくらい知っている。けれど、今はエマージェンシー。人々は外に出ることすらできない。目的を知って欲しい。営利のためではない。人々をほっこりさせるためだ。それは音楽の役目じゃないか? と僕は問いたい。 はじめて回線を切られたのは、僕が自分の曲を流しているときだった。「著作権に抵触している」旨のアラートがiPhoneに表示され、一方的に切断される。法律の話はこの際脇に置いておく。自分の曲を人々に届けて、ほっこりさせて、なぜ回線を切られるのか、僕は理解に苦しむ。 アーティストにとっても、この行為はプロモーションになるはずで、実際僕が流したことで、CDやアナログ盤を買ってくれた人が少なからずいる。 金を払えと言われるのなら、そのアーティストにお金を確実に届けてくれるのであれば(ここはとっても大事)、きちんと申請して、払わせてもらいたいと思うのだが。 話を戻す。 なんにせよ、音楽界にとって、今がとんでもないピンチであることに変わりはない。コロナが収束したとしても、ライヴを開催することはしばらく困難を極めるだろう。 ある夜、音楽界の重鎮から深夜に電話がかかってきて、その沈んだ声に僕はショックを受けた。事態は僕が想像していたよりはるかに深刻だった。 ならば、指をくわえているより、動いてみようと思った。「死して尸、拾う者なし」。その覚悟はとうの昔にできている。失うものなんて、そもそもなにもない。 そのうち「Hello! New World」という言葉が映画のタイトルのように浮かんできた。「コロナ後の世界」って表現よりはずっとマシだと思うのだ。僕らは新しい世界の担い手になることができる。 ライヴハウス、そして照明、音響、録音、映像、楽器、マネージメント、バンドのメンバー。プロフェッショナルの集団であるチームHEATWAVEも。誰一人として仕事ができない状態だ。 おまけに開催見送りになってしまったツアーのキャンセル料ってものが発生する。ツアーはできない、支払いは抱える。泣きっ面に蜂。マスク2枚は届かないし(いらないけど)、10万円は届かない(あてにしてないけど)のに、税金の振込用紙だけは確実に届けてくれる国。ぷんぷん。 でも、ロックンロールは逆境でドリームする力のことだ。こんな時だからこそ、夢を見なくてどうする?きっと、ジョー・ストラマーならそう言うだろう。 賭けてみることにした。 ライヴができないなら、チームHEATWAVEの力を結集し、経営に苦しむライヴハウスを借り切って、そこから普段は絶対に見ることができない至近距離のマルチカメラの映像と、プロフェッショナルの技術による音響技術で、ライヴを「生」で配信したらどうだろうか?「生」ってところがもっともたいせつにしたいポイント。 こうやって無観客生配信ライヴのアイデアが生まれた。合言葉は「Hello! New World」。 地方に住んでいるファンにも、ひょっとしてこれからバンドの音をリモートで届けられるかもしれない。 はっきり言って、これは賭けだ。コケたら、僕らに明日はない。でも、今、チャレンジする姿をオーディエンスに見てもらいたい。明日は自分の力で創造できるはずだ、と。 そう感じてもらえたら、嬉しい。 この原稿を書かせてもらって、85回目。はじめてこころの底から宣伝させてもらいます。ぜひ、参加してください。チケット、安くはないと思います。でも、それだけのものはお見せします。一緒に未来を創りましょう。 感謝を込めて、今を生きる。 Hello! New World / 新しい世界のためには、WHAT's IN? tokyoへ。

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