1億円の獺祭、1本だけ販売へ 人類初、宇宙での日本酒造りに挑戦
日本酒「獺祭(だっさい)」で知られる旭酒造(山口県岩国市)は11日、人類初となる宇宙空間での日本酒造りに挑戦すると発表した。2025年後半にも、原料となる酒米や水などをロケットで打ち上げ、国際宇宙ステーションの実験棟「きぼう」内で発酵させ、地球に持ち帰る。100ミリリットル分をボトル1本のみ瓶詰めして1億円で販売する計画で、全額を今後の日本の宇宙開発事業に寄付する。 将来的な人類の月面への移住を考えて構想した。「きぼう」の活用は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の有償利用制度で24年7月に承認された。打ち上げに向け、三菱重工やあいち産業科学技術総合センターの協力を得て準備を進めている。 現在は専用の醸造装置を開発中で、装置の中に酒米「山田錦」や、水、酵母などを入れた状態でロケットで打ち上げる。精米歩合は同社の看板商品の「純米大吟醸 磨き二割三分」と同じ23%にする予定だ。 宇宙飛行士に原材料と仕込み水を混ぜ合わせてもらい、地球からアルコール濃度を観測しながら発酵を進める。現場は地上と違って重力が小さく対流が起きにくい。発酵を健全に進めるため、念入りにかき混ぜる必要があるという。発酵期間は約15日を見込む。 その後、できた「もろみ」(どぶろくの状態)約520グラムを冷凍して地球に持ち帰り、搾って日本酒にする。分析に必要な量を除き、100ミリリットルをボトル1本に瓶詰めして「獺祭―MOON 宇宙醸造」として販売する。 将来的には月にあるといわれる水も使って月面での獺祭醸造を目指すという。【植田憲尚】