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フェースシールド1万枚、3日で病院へ 従業員8人の町工場が超速仕上げ【#コロナとどう暮らす】

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埼玉新聞

 「フェースシールドが不足して困っている」と駆け込んできた病院職員の話を聞いた町工場の社長は「分かりました」と即答、土日に型と生産ラインを作り、月曜日に製造ラインを動かした。従業員8人の埼玉県の戸田市の小さな工場は、超速の3日で1万枚のフェースシールドを仕上げて病院に届けた。 <新型コロナ>技術と余った部品でフェースシールド、川口の町工場が開発 医療崩壊防ぐものづくりの魂

 工場は戸田市新曽のWATAX(ワタックス)。金属も含め「何でも加工できる」が売りの小さな工場だ。駆け込んだのは、戸田中央総合病院を運営する戸田中央医科グループの広瀬晶子さん。同工場の渡辺正文社長(55)は長年、戸田ロータリークラブで社会奉仕活動に参加してきた。同クラブのチャーターメンバー(創立時会員)で唯一の存命者が同医科グループの中村隆俊会長(92)。会長秘書の広瀬さんはその縁を頼ったのだった。  医療用のマスクの上部に両面接着テープで透明プラスチックシートを取り付けるタイプ。下部は直線だが、上部は曲線で膨らむ。横幅は最大で25センチ、縦は最大12センチ。同病院では、職員が文房具の書類ファイル用のシートをハサミで切って手作りしていた。顔全面をカバーするものとは違い、鼻と目をカバーする。  広瀬さんが駆け込んだのは4月の初め。話を聞いた渡辺さんは「病院の現場は思った以上に過酷で驚いた。何とかしなくちゃと思った」と言う。

 「コロナ禍で世の中が凍結した。ロータリークラブの奉仕活動も事実上ストップしていた。だから、誰かが困っているという情報が入ってこない。世の中と一緒に自分も活動を止めてしまっていた。これではだめだ、と気付いた」と渡辺さんは語る。  工場は、大手工場で働いた技術を生かして独立した渡辺さんが2001年に創業。食品や医薬品などさまざまな分野の製造ラインの設計・製造を請け負っている。  コロナ禍で注文はストップ状態。「しかし、かつて進出した中国の工場を撤退して日本国内に回帰する動きが出ている。日本で生産ラインを再構築したいというメーカーからの注文が舞い込んでいる」という。  工場内には、穴を開けたり、削ったり、さまざまな精密工作機械が並ぶ。それぞれ得意分野がある機械群は、油で磨かれ重厚な存在感を放つ。従業員も腕に自慢のベテランがそろう。事務担当も含めて社員は7人。フェースシールドは全員が動いたプロジェクトだった。

 工場の事務担当、大川文子さんは「コロナ禍で病院が困っていることを手助けすることに自分も関われて役に立てたことがすごくうれしい。満ち足りた気持ちになりました」と話した。

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