政府のお金は俺のもの? 給付金再支給否定の麻生発言、何が問題なのか
2回目となる緊急事態宣言の発令を受けて、再度の給付金支給を求める声が高まっていますが、これを全否定した麻生太郎財務相の発言が波紋を呼んでいます。財政には限度がありますから、一般常識として簡単に決断できるものではありませんが、麻生氏の発言は何が問題なのでしょうか。
今回の緊急事態宣言は前回と比較して対象が絞られていますが、それでも消費への影響は大きく、国内では給付金の再支給を求める声が高まっています。ところが財政の責任者である麻生氏は給付金の再支給に関する質問に対し、「前回のように一律10万円というようなことをやるつもりはありません」とこれを否定。生活困窮世帯に限定した給付についても「考えにくいでしょうね」と一蹴する発言を行いました。実は麻生氏は昨年10月の段階でも同じような発言を行っています。今回と同じく給付金に関する記者からの質問に対して「勘違いしている人が多い」と述べています。 一連の発言には批判が殺到していますが、ネット上の反応を見ると、批判されているのは発言の内容そのものというよりは、麻生氏の言い方やその背景にある民主主義に対する考え方に対してであると思われます。 麻生氏の発言は常に、政府のお金と自分のお金を混同するような言い回しです。民主国家における主権者は国民であり、政府のお金はすべて国民が税金として提供したお金です。選挙で選出されたリーダーは、国民の代表としてそのお金の使い道を管理するのが仕事ですから、最終的に使い道を決めるのは国民ということになります。特に「勘違いしている」という発言からは、あたかも自分のお金を国民に配ってやっているというニュアンスが出てしまっていることは否定できません。 今回の再支給全否定発言は、閣議後の記者会見で出てきたものですが、この発言の前には、特定メディアを名指しした上で、「メディアの言う通りやったって、なかなかうまくいかねぇよって話だよねぇ」「前回の10万円給付はうまくいくとメディアが報じていたが、そうはいかなかったというのは事実ですから」といった話が続き、その延長線上で再支給はあり得ないという流れになっています。麻生氏にとっては、メディアからの指摘を受けて10万円を決断したものの、うまくいかなかったという認識のようです。 一連の発言を検証すると、麻生氏が批判されているのは財政支出に消極的という理由もありますが、もっとも大きいのは、国民の税金をあたかも自分のお金であるかのようなニュアンスで発言していることや、メディアからの指摘で物事を決断するなどリーダーとしての役割を放棄しているような印象を与える部分にあると思われます。 (The Capital Tribune Japan)