欠けてしまったピースが、最後の最後でようやく埋まった町田 ラストは敵地鹿島戦 失うもののないものの強み…ミラクルV起こるかも
◇コラム「大塚浩雄のC級蹴球講座」 ◇30日 J1第37節 町田1―0京都(町田Gスタ) 欠けていた1ピースが、リーグ最終盤ではまった。 0―0で迎えた後半22分、林の縦パスを受けた相馬が左サイドから仕掛け、クロスを入れた。これが相手DFの足に当たり、GK太田の伸ばした指先を弾いてゴールに吸い込まれた。記録はオウンゴールとなったが、この1点が生き残りをかけた貴重な決勝ゴールとなった。 残り2節、優勝の可能性を残すためには勝つしかない1戦。町田対策を徹底した京都の堅い守りを攻めあぐみ、単調な攻撃ははね返された。その中で、唯一、ゴールのにおいを感じさせたのが、相馬だった。前半からキレキレのドリブルで左サイドを突破した。時にはカットインして、チャンスをつくる。ロングボール、ロングクロスを軸にした町田の攻撃の中では、相馬のドリブルが大きなアクセントとなっていた。 昇格1年目で首位を走り続けた町田。堅守速攻の町田にあって、平河がキレキレのドリブルを武器に、攻撃における大きなアクセントになっていた。その平河が7月にイングランド”2部”のブリストル・シティに移籍。この移籍に伴い、戦力補強の目玉として加入したのが相馬だ。 しかし、平河がいなくなった町田は失速した。25節から35節まで2勝5分け4敗。相馬1人が悪いわけではないが、移籍してすぐにチームにフィットできるわけもなく、首位の座も明け渡し、苦しい戦いが続いた。 そんな相馬がようやく覚醒したのが前節のFC東京戦だった。後半34分に移籍後初ゴール。6試合ぶりの勝利を手にし、そしてこの日はしっかりと自分の持ち味を出し、連勝となる白星を引き寄せた。ドリブラー平河が抜けて欠けてしまったピースが、最後の最後でようやく埋まった。 首位・神戸が土壇場で追いつき、勝ち点差は3。町田は暫定2位に浮上し、優勝の可能性は残った。1日の広島―札幌戦の結果次第で、最終節は三つどもえの決戦となる。 「前半からかなりチャンスがあった中でなかなか攻められず、一発やってやるぞというところから自分の長所を出したいいプレーだったかなと思う」と相馬。さらに「勝てない時期が続いた中で、なんとしても連勝という思いがあって、ホントに最後仕留められて、良かったと思う。最後、頂点を目指せるチャンスがあるんで、なんとしてもみんなでつかみましょう」とサポーターに訴えた。 黒田監督も「ラッキーなゴールだったが、ゼロでいっていたことが、こういうゴールにつながった。魂のゴールだった」と振り返った上で、「あと1試合、われわれには希望が残されている。少ない可能性かもしれないが、そこを目指して、最後、アウェーも勝って終われるようにしたい」と言い切った。 なんだかんだ言われながら、ついにここまで戦いきった。ラスト、敵地での鹿島戦。失うもののないものの強み。奇跡が起こるかもしれない。 ◇ ◇ ◇ ◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)
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