【オートレース】不思議な力を持つ男、勝っても負けても主語になる業界のスター・永井大介~浜松G1スピード王決定戦
◆スピード王決定戦(G1、29日・3日目、浜松オートレース場) このオートレース界で王者といえば、高橋貢だ。現役最強といえば、青山周平だろう。一番速い男といえば、そこは鈴木圭一郎だ。アイドルといえば、佐藤摩弥。業界のアイコンといえば、やっぱり森且行を思い浮かべる。 じゃあ、業界のスターといえば誰なのか。その答えは、永井大介だ! 永井には他の選手たちが持ち得ない不思議な力がある。それは人々の注目と関心と興味を一身に集めてしまう才能である。 永井は勝った時にファンを歓喜させるが、それと同じぐらいに激しく敗れ散った時もまた人々の注視を集めてしまう。勝っても負けても主語になる。こんなレーサーは他に探せない。 例えるならば、伝説のプロ野球ピッチャーか。江川卓さんは現役時代、バッターをきりきり舞いに封じ込んでも、フルボッコにKOされても、テレビや新聞のトップニュースになりまくった。自軍を応援しているファンだけでなく、相手チームを支持するファンの関心をも引き寄せてしまう。でも、それこそが真の大スターたる所以だ。 永井が苦笑いいっぱいに話し始めてくれた。「う~ん、僕は目立ちたいタイプではないんですけれどねえ。本当に仕事は全力でやっていますが、自分は力を抜いて走るフォームなので、何というか見ている人には楽をしているように見えちゃうのかなあ。至って謙虚だと思うし、もう、必死なんですけれどね~」 そんな唯一無二のスターが今年最後の大舞台にやって来ない。2008年から連続で出場していたスーパースター王座決定戦にエントリーすることがついに果たせなかった。スーパースター。まさに永井のためにあるフレーズの大会に彼がいないなんてさみしいにも程がある。 出場を逃したことを聞いてみると、そこには達観した表情の永井がいた。「オートレースは生ぬるい世界じゃないからね。ずっと出場できていた時だって、全然当たり前だなんて思ったことは一度もなかったし。ベテランがいて、若手もどんどん出てきて、実力は本当に拮抗しているんだよ。だから出場することはすごく大変だし、いずれは出場がストップすることは仕方ないと思っていました」 それでも本物のスターは、そう簡単に強烈な輝きを失うわけがない。今度は笑顔で今後の健闘、展望を力強く口にした。「でも、またSSには出たいね。やることをしっかりやり続けていくし、エンジンや状態の兼ね合いが整えば、まだまたやれると思っていますよ! でも、ただ出るだけじゃあだめだよね。去年だって出ることができたけれど、フライングをしちゃたし、もう散々だったもんなあ。出場して、しっかり結果も残せるように頑張りますよ!」 同じ25期生の有吉辰也には、常に刺激を与え続けられているという。「タツもすごく頑張って、すごいからね。また2人でSGを戦い合いたいね~。タツがスタートを切って、自分が抜いてやり合うみたいなレースをまた見せることができたらいいなあ」 SSへたどり着くことは叶わなかったが、今シリーズの永井は往年の大迫力を示しつつある。「うん、そうだね。状態はいいと思います。あとは試走だよね。自分はタイムを出したいタイプなんで、もっといいタイムを出したいね。栗原(佳祐)君なんて2級車で3秒29でしょ。もう、すごいって。速すぎだって(苦笑)。まあ、自分も前回の浜松で28は出たし、27ぐらい出せたらいいなと思っています。最近は特にスタート力が大事だけれど、今回は切れていますし、Vしたいですよ!(最強のスタースマイルで)」 (淡路 哲雄)
報知新聞社