米国の唐突な「ミサイル発射」衝撃のワケ!いまや「ミサイル大国」中国の驚くべき実態
知らぬ間に「米国のミサイル基地」と化していた日本 日本にとっての「最悪のシナリオ」とは? 【写真】中国を警戒する米国…! 政府による巧妙な「ウソ」とは一体…? 国際情勢が混迷を極めめる「いま」、知っておきたい日米安全保障の「衝撃の裏側」が、『従属の代償 日米軍事一体化の真実』で明らかになる。 ※本記事は布施祐仁『従属の代償 日米軍事一体化の真実』から抜粋・編集したものです。
30年ぶりのミサイル発射
中国の台湾侵攻を抑止し、侵攻が起きた場合には台湾を防衛するため、米国がもう一つ計画していることがあります。 射程が500キロを超える地上発射型中距離ミサイルのアジア太平洋地域への前方配備です。 2019年8月18日、米カリフォルニア州ロサンゼルスの沖合約100キロにあるサン・ニコラス島という米海軍が管理する無人島から、1発のトマホーク・ミサイルが発射されました。 米国がこの種類のミサイルの発射実験を行ったのは、約30年ぶりのことです。 この約2週間前、米国はそれまでロシアと結んでいた中距離核戦力(INF)全廃条約※1を破棄しました。破棄と同時にエスパー国防長官は声明を発表し、「国防総省は地上発射型の通常兵器のミサイル開発を全面的に推進する」と宣言しました。 そして、その国家意思を内外に示すため、海軍が運用する中距離巡航ミサイル、トマホークを陸上から発射してみせたのでした。 ミサイル発射実験が成功すると、同長官は、新たに開発する地上発射型中距離ミサイルをアジア太平洋地域に配備したい意向を表明しました。 ※1 中距離核戦力(INF)全廃条約とは、冷戦末期の1987年に米国とソ連が締結した二国間の軍縮条約で、射程500キロから5500キロまでの地上発射型中距離ミサイルの保有を禁止した。ソ連崩壊後もロシアに引き継がれたが、2019年に米国が離脱して失効した。
中国の中距離ミサイルへの対抗
米国政府は、INF全廃条約を破棄した理由を、ロシアが長年にわたり条約違反を続けてきたためだと説明しました。 しかし、破棄の最大の理由は、実は「中国」でした。新たに開発する地上発射型中距離ミサイルの配備先をアジア太平洋地域としたのが、その証拠です。 台湾有事が起きた時、台湾防衛のために介入する米軍にとって最も脅威になると考えられていたのが中国の地上発射型中距離ミサイルでした。 INF全廃条約は米国とロシアの二国間条約だったため、中国はこの条約に縛られませんでした。前章で述べたとおり、中国は1996年の第三次台湾海峡危機以降、台湾有事に介入する米軍の接近を阻むA2/AD能力の強化に乗り出しました。 海軍や空軍の強化とともに中国軍が力を入れたのが、ミサイルの開発でした。多くの種類の地上発射型中距離ミサイルを開発し、米国がINF全廃条約を破棄した2019年の時点で1000発以上を保有・配備していました。 中国が保有する代表的な地上発射型中距離ミサイルは、次の五つです。 (1)東風(DF)21C 射程1500キロ以上と推定される中距離弾道ミサイル。日本全域を射程に収める。対艦攻撃が可能なタイプ(DF21D)もあり、西太平洋を航行する米軍空母への攻撃が可能なことから「空母キラー」とも呼ばれる。 (2)東風(DF)26 射程約4000キロと推定される中距離弾道ミサイル。西太平洋における米軍の作戦拠点であるグアムを攻撃することも可能なことから、「グアムキラー」とも呼ばれる。 (3)東風(DF)17 射程約2000キロと推定される中距離弾道ミサイル。変則的な軌道を高速で飛翔することから既存のミサイル防衛システムでは迎撃が困難とされる「極超音速滑空体(HGV:Hypersonic Glide Vehicle)」の搭載が可能とみられる。 (4)長剣(CJ)10 射程1500キロ以上と推定される中距離巡航ミサイル。 (5)長剣(CJ)100 射程2000キロ以上と推定される中距離巡航ミサイル。マッハ4以上の超音速で飛翔するとみられる。 こうした中距離ミサイルで在日米軍基地の滑走路が破壊されたり、米空母の接近が阻止されたりした場合、米軍は航空機の運用がかなり制限されることになります。その結果、台湾海峡周辺の航空優勢は中国側に握られる可能性が高いと予測されます。 中国にとっては、台湾海峡周辺の航空優勢を握ることができれば、台湾への着上陸作戦もやりやすくなります。 米国がこの不利な状況を変えるためには、中国本土にある中国軍の航空基地やミサイル基地を攻撃する能力が必要になります。 米国がINF全廃条約を破棄し、新たな地上発射型中距離ミサイルの開発に乗り出したのには、このような大きな理由があったのでした。 >>「「米国に見捨てられる…」安倍・岸田の恐怖が生んだ「戦慄すべき」日本の末路「もはや米国のミサイル基地」」からこれまでの内容をおさらいできます。
布施 祐仁(ジャーナリスト)