鬼滅ブームが観光ビジネスに一石 JR東やJR九州が鬼滅列車で続々コラボ
「竈門神社」にファンが押し寄せ
一方、ファンの間で「聖地ではないか」と騒がれているスポットを巡る観光ツアーも企画されている。『鬼滅の刃』に登場する地名は大半が架空のもので、公式が「聖地」として認めている場所は一つもない。だが、主人公の竈門炭治郎の「竈門」という名前から、九州各地にある「竈門神社」にファンが押し寄せているのだ。 ファンが集う「竈門神社」は、福岡県太宰府市の「宝満宮竈門神社」、筑後市の「溝口竈門神社」、そして大分県別府市にある「八幡竈門神社」の3社あり、このうち、宝満宮竈門神社と溝口竈門神社を巡るツアーが、「SL鬼滅の刃」とは別の動きとしてJR九州長崎支社で企画されている。八幡竈門神社ではお守りが1000円、御朱印が500円で売られているが、それらがフリマアプリで高額で転売されていることが問題となっている。大手フリマサイトを見てみると高値で取引されているものも確認できた。 「『竈門』神社を巡る旅」と題されたツアーで、12月12日の午前8時半前に長崎駅を出発し、佐賀県の新鳥栖駅まで特急「かもめ」で移動。そこから貸し切りバスに乗り換え、溝口竈門神社や宝満宮竈門神社を巡り新鳥栖駅まで戻り、帰りも「かもめ」で長崎駅に夜7時半前に戻るというプランだ。料金は大人1人8000円(税込み)で、Go Toトラベルキャンペーンの地域共通クーポン2000円分もつく。 ツアーの申し込みを受け付ける、JR九州長崎駅旅行の窓口によると、「予約を始めてすぐに完売。現在20組ほどキャンセル待ちが出ている状態」だといい、ツアーへの人気も確かなようだ。ツアーは今のところは実施する予定ではあるものの、新型コロナウイルスの感染拡大の状況などによっては今後中止になる可能性もあるという。
海路にも及ぶ「聖地」巡りツアー
さらに『鬼滅』の「聖地」巡りツアーは、鉄道だけでなく海路にも及んでいる。商船三井フェリーが運航するフェリー「さんふらわあ」では、大阪と別府を結ぶ航路に乗って、別府市の八幡竈門神社を「聖地巡礼」するモデルコースをWebサイトで紹介している。フェリーでの移動はGo Toトラベルキャンペーンも適応されるだけあり、『鬼滅』ブームをなんとか観光に結び付けたい思惑があるのだ。 映画『鬼滅の刃』公開前、コロナ禍の中で映画館に人が集まることに対して危惧する声も見られた。それが蓋を開けてみると1つの映画館で複数のスクリーンで上映されるのが当たり前で、連日賑わいを見せている。人の移動を伴う観光でも感染拡大を懸念する声もある一方で、同映画とのコラボによって活況を呈している状況だ。 『鬼滅の刃』には、コロナ禍による不安を忘れさせる力があるのかもしれない。感染者の拡大が続く昨今ではあるが、エンタメの持つパワーが全集中「日の呼吸」となって、コロナ禍を吹き飛ばす源泉につながると信じたい。(フリーライター河嶌太郎)
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