アウティングは「許されざる行為」の判決に、遺族は「一つの成果」【一橋アウティング訴訟】
「アウティングは、同性愛者であることを意に反して暴露する、人格権・プライバシー権等を著しく侵害するもので、許されない行為であることは明らか」ーー。 同級生にアウティングされた一橋大学の法科大学院生(当時25歳)が2015年8月に校舎から転落死したのは、大学側の対応が不十分だったのが原因として、両親が大学側に賠償を求めた訴訟の控訴審判決が11月25日、東京高裁であった。 村上正敏裁判長は、両親が主張していた大学側の「安全配慮義務違反」は認められないとして、控訴を棄却した。一方で、判決では両親が望んでいた「アウティング」そのものの違法性に踏み込んだ判断が行われ、法廷でも「アウティング」に関する判断をまず最初に読み上げた。 判決後の記者会見で学生の母親は「一審判決では認められなかったことが認められただけで嬉しく思っています」。 そして、妹は「この5年間、親としてどうすべきだったか、妹としてどうすべきだったか。どうすれば同じ結果を招かなかったのか、毎日考えてきたので、一橋大と前向きな話ができなかったのは残念に思っていますが、『アウティングは不法行為』と判決で明記されたのは、この5年間の一つの成果となり、今後の再発防止策の根底になっていくのではないか。この結果が得られたことはよかったと思っています」と語った。 代理人の南和行弁護士らは、判決で遺族が求めていた部分が明記されたことから、上告はしない方針だと明らかにした。 また、母親は涙を拭いながら「OBの方々が動いてくださって、この事件を風化させないようにしてくださっていると伺っています。息子のような子が相談できる場所があって、LGBTQの子もつつがなく大学生活を送れるようになっていってほしい。裁判では大学が勝ちましたが、今後授業で、このことが伝えられる日が来るんじゃないかと願っています」と、この5年間で起こった一橋大内の変化についても言及した。