「きっと運命なんだよ」子猫を保護した夫婦。一度は里親に引き取られるも、ふたりの元に帰ってきた子猫とはじめるハートフルライフ【書評】
『彼とねこが待っている。』(九尾たかこ/KADOKAWA)は、子猫を保護した夫婦が猫と重ねていく日々を描いたハートフルな物語だ。まだ寒い季節。主人公の章介(しょうすけ)は、妻との外出中に見つけた子猫を一時的に保護することになる。 【漫画】本編を読む
弱っていた子猫は産まれて2~3カ月の女の子。初めて猫を保護した章介は、小さな命に感動しながら子猫用のミルクの用意やトイレ掃除などのお世話をこなしていく。序盤では猫との関わり方が初々しいのも、読んでいて癒やされるポイントだ。夜鳴きする子猫に声をかけながら手のひらを差し出すと、その上で安心して眠りはじめる。こうした「心が通じる」体験に感動しながら、子猫との日々をすごしていた。 ふたりと1匹での暮らしに慣れてきたある日、子猫を引き取りたいという人が見つかり、里親へ送り出すことに。元々一時的に保護するだけの予定だったが、いざ別れの日がくると寂しくてたまらない。「これで良かったんだ」と自分を納得させながらも、中々気持ちを割り切れずにいた。 しかし、新たな飼い主が海外転勤になってしまい、子猫は章介夫婦の元に戻ってくることに。改めて迎え入れられた子猫は、「こころ」と名付けられ家族の一員に加わったのだった。 こうしてはじまったこころとの日々は、忙しくも楽しい。湯船に落ちてずぶ濡れになったこころを乾かしたり、かわいい猫の写真を展示するキャットコンテストに参加したりと、すっかり親バカになっていく。猫らしく生きているこころに振り回されることに幸福を感じる姿は、どこから見ても立派な愛猫家だ。 『彼とねこが待っている。』は、3巻で完結を迎える。2巻では人間と猫の病気の話や、猫グッズが増え続ける愛猫家あるあるのストーリーが繰り広げられている。完結巻となる3巻では、2匹目の子猫・天太(てんた)を迎え、ますますにぎやかになった章介一家の物語を楽しめる。 かわいい猫と暮らす優しいエピソードばかりなので、猫好きの人や癒やされたい人はぜひ本作を手に取って楽しんでもらいたい。 文=ネゴト / 押入れの人