中国海警が襲来しても弱腰バイデンは尖閣を守らない
ジョー・バイデン政権が発足してから、20日で1カ月になるが、具体的な外交政策は、いまだ見えてこない。 アメリカ国内の新型コロナウイルス対策で多忙を極めているのは理解できるが、アメリカの「不在中」に、中国は周辺諸国・地域に触手を伸ばしている。16日には、機関砲らしきものを搭載した中国海警の「海警1301」と「海警6303」の2隻が、尖閣諸島周辺の領海に侵入した。2月1日に海警法を施行し、この法律に則って、ついに殺戮兵器を携えて尖閣海域に現れたことで、日中間の緊張は、また一段階アップした。 ■ 中国の春節にタイミング合わせた電話会談 そんな中、バイデン大統領は、ワシントン時間の10日夜、北京時間の11日になって、ようやく習近平主席との電話会談に臨んだ。 日本では、「米中、経済・安保で応酬 バイデン氏 香港・台湾に懸念」(2月12日付日経新聞)などと、あたかもバイデン大統領が習主席に強硬姿勢で向かっていったような報道がなされている。だが、ホワイトハウスHPのブリーフィングページを見ると、冒頭で、「大統領は春節(旧正月)を前に、中国の人々への挨拶と願いを共有しました」と書かれている。 実際、中国では12日が春節で、米中首脳会談を行った11月は大晦日だった。中国側は、「アメリカ大統領が中国に向けて春節の挨拶の電話をかけてきた」というふうに仕向けたのである。 そもそも、中国の大晦日に電話会談をセッティングしたこと自体、バイデン政権の弱腰ぶりが感じられてならない。中国に対して、香港や新疆ウイグルの人権侵害や、東シナ海・南シナ海での挑発行為などを強調するなら、中国の正月休暇中だろうが構わず電話するくらいの気概がほしい。
■ バイデン政権のアジア戦略を示すと目された論文の中身 米国務省のアジア太平洋担当国務次官補もいまだ不在な中で、バイデン政権のアジア担当の司令塔になると目されているのが、バラク・オバマ政権時代に国務省アジア太平洋担当国務次官補を務めたカート・キャンベルNSC(国家安全保障会議)インド太平洋調整官である。 キャンベル調整官は先月、米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』に、「アジア秩序をいかに支えるか――勢力均衡と秩序の正統性」という論文を発表した。この論文は、同じくNSCの中国担当シニアディレクターに就任するラッシュ・ドーシ・ブルッキングス研究所中国担当ディレクターとの共同執筆である。日米の外交関係者たちの間では、バイデン政権のアジア政策の骨子になるものとして、大きな注目を集めている。 私も全文を読んだが、結論から先に言えば、すっかり幻滅してしまった。 まずこの論文は、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官の博士論文への言及から入る。1814年9月から翌1815年6月にかけて、ウィーン会議が開かれ、ナポレオン戦争後の欧州秩序を定めた。以後、「ヨーロッパで第一次世界大戦まで1世紀にわたって『長い平和』が築けた成果は、現在のインド太平洋にも応用できる」と、論文では主張している。 具体的には、「イギリス外相のカッスルレー子爵が取りまとめたパワーバランスと、オーストリアのクレメンス・メッテルニヒ外相が確立した秩序の正統性」である。そこで、現在のインド太平洋戦略として、「(1)パワーバランスを維持し、(2)地域国家が正統性があると認める秩序を構築し、(3)この二つを脅かす中国に対処するため、同盟国とパートナーの連携をまとめる」のだという。