愛媛の「エモい」レトロ喫茶
昭和レトロブームで喫茶店が注目されています。昔から変わらない店構えや内装、メニュー、食器―。昭和世代はノスタルジーをかきたてられ、若者は新鮮で「エモい」と感じるようです。県内に数多くある喫茶店の中から、今回は半世紀近くの歴史がある3店を訪ねました。時代に合わせた変化と守り続けるスタイル、両者が相まった愛媛の純喫茶の魅力をお届けします。(デジタル報道部) ■世界の豆でこだわりの一杯 自家焙煎珈琲(ばいせんコーヒー)モア(松山市) 松山市味酒町1丁目の「自家焙煎珈琲(ばいせんコーヒー)モア」は、マスターの堀久雄さん(72)が世界の豆を自家焙煎して提供するこだわりの店です。 1979年、会社員をやめた堀さんが27歳でオープンしました。今は妻の美鈴さん(71)らスタッフ5人で切り盛りしています。内装は開店時から大きく変わらず、中2階や地下室など少人数で落ち着ける空間があるのが特徴です。 夏場のおすすめは水出しアイスコーヒー(650円)。くみ上げた地下水を使い10時間かけて抽出した一杯です。使う豆は3種類で毎年世界中の豆から選び抜くそうです。こくがありながら透明感が漂い、なめらかな舌触りが魅力です。 ■女性を引きつける味と空間 アルパカ珈琲店(新居浜市) 新居浜市若水町の「アルパカ珈琲店」は、中心部の昭和通りの近くにあります。創業当時の1975年は、目の前が大型小売店の駐車場で人通りも多かったようですが、今は周囲はひっそりとしています。一部が半円形になったおしゃれな外観の純喫茶は、大阪の老舗店で修行した店主のこだわりを、半世紀にわたって守り続けています。 新居浜市出身の宮崎忠司さん(78)が、就職先の大阪市で丸福珈琲店と出合ったのが70年ごろ。コーヒーの味や店の雰囲気に憧れ、地元で喫茶店を開きたいと2、3年修行生活をしたそうです。 「昔の喫茶店はおじさんがたばこ吸って、インベーダーゲームをやってるイメージでしょ。主人は、丸福さんのように女性が一人でも安心して入れる店を目指したんですよ」と妻の敬子さん(65)が笑顔で迎えてくれました。 コーヒーと当時はまだ珍しいワッフルをメーンにしたものの、最初は男性客ばかり。女性にアピールするため、隣に雑貨店も開きました。徐々に女性客が増え、今や三世代で訪れる常連さんも。「嬉しいし励みになります」と敬子さん。 コーヒーは丸福の味を受け継いだ深入り焙煎。「うちはこれ一本」というオリジナルブレンドは、新居浜の人向けに少しマイルドにしています。一口めにガツンとくるコクとうまみ、でも後口はあっさりです。 ■「エモい」店内 変わらない味 喫茶モンブラン(八幡浜市) 八幡浜市中心部の新町商店街を歩くと「喫茶モンブラン」(八幡浜市新町1丁目)という看板が目に入ります。少し古びた建物の2階に上がると、昭和にタイムスリップしたような雰囲気が広がります。赤色のソファにステンドグラスの壁…。元祖「映え」ともいえるハイカラな空間に胸が躍ります。 店長の菊池文利さん(55)によると、創業は1978年で、46年目を迎えます。もともと祖父の代でバイクや自転車を販売していたといいますが、父親の嘉光さん(88)が店舗の建て替えを機に店を開きました。嘉光さんは、ほほ笑みながら当時を振り返ります。「階段の下まで行列ができてね…。若い人が多かったんですよ」 特徴の一つは、豊富なメニュー。数えてみると、約100種類ありました。コーヒーやケーキだけでなく、ブリュッセルワッフル(460円)、カツハヤシ(720円)、エビピラフ(580円)、ボルシチ(740円)などなど。 当初はもっと少なかったそうですが、文利さんは「人気メニューは残しつつ、トレンドに合わせて新メニューを追加していくと、ここまで増えましたね」と目尻を下げます。
愛媛新聞社