介護倒産が年間最多を更新、休廃業・解散も過去最多へ
2020年「老人福祉・介護事業」の倒産状況
2020年1月から12月2日まで「老人福祉・介護事業」倒産が112件に達し、介護保険法が施行された2000年以降で、これまで最多だった2017年と2019年の111件を上回り、最多件数を更新した。 ヘルパー不足が続く「訪問介護事業」が52件(構成比46.4%)と半数近くを占めた一方、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」が36件(同32.1%)と増加した。 従業員5人未満が75件(同66.9%)、負債1億円未満が90件(同80.3%)と、小・零細事業者を中心に推移している。 国や金融機関などの新型コロナ支援で踏みとどまり、新型コロナ関連倒産は10月までに累計3件にとどまっていた。しかし、11月単月で4件と急増し、全体の件数を押し上げた。コロナ支援効果が薄れ、介護業界でも息切れの兆しがうかがえる。 なお、2020年1-10月「老人福祉・介護事業」の休廃業・解散は406件で、2カ月を残して2019年通年(395件)を2.7%上回った。新型コロナの影響や人手不足などで先行きが見通せず、廃業を決断するケースも増えており、休廃業・解散も年間最多の2018年(445件)を大幅に上回る可能性が高い。 コロナ禍で感染防止のため利用手控えが増え、売上高が落ち込む一方、費用負担が高まっている。さらに、第三波が襲来し、再び老人福祉・介護事業者は難局を迎えている。追加支援や2021年度の介護報酬の改定状況によっては、倒産や休廃業・解散がさらに加速する可能性も出てきた。 ※ 本調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。 倒産は、前年比は2019年間との比較。2020年は1月~12月2日までを対象期間とした。 ◇倒産件数はすでに年間最多を更新 2020年1月から12月2日までの「老人福祉・介護事業」倒産は112件(前年比0.9%増)で、これまで年間最多だった2017年と2019年の111件を上回り、最多記録を更新した。このペースで推移すると、2020年(1-12月)は120件を上回る可能性が出てきた。 負債総額は135億6300万円(同16.1%減)と減少している。これは負債1億円未満が90件(構成比80.3%)、従業員5人未満75件(同66.9%)など、小・零細事業者を中心に推移したため。 ◇休廃業・解散も過去最多ペース 2020年1月-10月の「老人福祉・介護事業」休廃業・解散は406件(前年比2.7%増)で、すでに2019年通年(395件、前年同期338件)を上回った。経営不振や人手不足、コロナ禍での事業意欲の消失など、経営体力のあるうちに事業を止めるケースが増えているとみられる。 このペースで推移すると、2020年の「休廃業・解散」は、過去最多の2018年(445件)を上回る見通し。倒産と「休廃業・解散」の合計が、初めて600件を超える可能性が強まった。