山口香×有森裕子/改めて開催の意義を問う「東京五輪、国民は望むのか」――文藝春秋特選記事【全文公開】
「文藝春秋」4月号(2021年3月10日発売)の特選記事「東京五輪、国民は望むのか」を公開します。(構成:広野真嗣) ◆ ◆ ◆ 「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」発言で辞任した森喜朗氏の後任として橋本聖子氏が東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長に就いた。長引くコロナ禍で開催も危ぶまれる中、東京五輪の“病巣”はどこにあるのか――。森体制に異論を唱えてきたソウル五輪女子柔道銅メダルの山口香筑波大学教授、バルセロナ五輪で女子マラソン銀メダルの有森裕子氏による緊急対談を敢行した。 ◆ ◆ ◆ 有森 橋本新会長は夏冬計7回も五輪出場経験をお持ちで、国際的な知名度も高い。政界やIOC(国際オリンピック委員会)ともパイプがあって場慣れもしているから、準備を指揮する条件を最も兼ね備えた人物だと思います。 ただ、違和感もありました。引き継ぎを受ける森前会長とパイプがある橋本さんに白羽の矢が立つのは分かるのですが、後任の五輪相が、経験者だからって丸川珠代参議院議員になったのは、どうなのでしょうか。 体制全体に“変化”が求められているのに、メディアが口を揃えて批判した森さんが糸を引いている――そう誤解を受けやすい。このまま残り5か月を乗り切らなければいけない、というあたりに現在の追い込まれた状況が表れています。 山口 橋本さんの資質・能力は申し分ありません。とはいえ手放しで賛成するのではなく、「政治家であること」と「決め方」の2点は、踏まえておくべきポイントです。いざ問題が生じた時、「なぜこの人が選ばれたか」が必ず問われますからね。
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山口 香,有森 裕子/文藝春秋 2021年4月号