バイオマス発電は本当にエコか(3) 加速する「脱炭素」
菅義偉首相が10月の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする方針を表明した。どのような対策でゼロにするかについての具体的な発表はまだないが、おそらく対策の柱の1つはバイオマス発電などの再生可能エネルギーの導入促進だろう。(編集委員・栗岡理子)
カーボンニュートラルで脱炭素社会は実現するか
「2050年カーボンニュートラル」を目指す政府の方針は、立ち後れ感は否めないものの、国連のグテーレス事務総長は「果敢な決断を高く評価する」と述べている。 菅首相は今後、地球温暖化対策計画やエネルギー基本計画、パリ協定に基づく長期戦略の見直しを進め、「環境と成長の好循環」を加速させていくという。 小泉進次郎環境相も昨年暮れから自治体に対し、2050年までにCO2の排出量実質ゼロを目指すことを呼びかけている。この「ゼロカーボンシティ」への取組を表明した自治体数は既に170を超え、日本の総人口に占める割合は6割を超えた。 政府のカーボンニュートラル宣言により、自治体のゼロカーボンシティも取り組みやすくなるだろうと期待がふくらむ。
エネルギーも「地産地消」が必要
しかし、不安は拭えない。自治体の取組を見ると、「再生可能エネルギーの利用促進」などの文字が並んでいる。 地域の資源を使って発電した再生可能エネルギーを利用する自治体は、まだそれ程多くない。最近目に付くのは、地域内にある資源だけでは賄えない程の規模の民間のバイオマス発電所を補助するケースだ。 国際環境NGO FoE JAPANの満田夏花事務局長は「地元の未利用材などを使い、電気だけでなく熱も活用する『エネルギーの地産地消』が本来あるべき姿。現在の大規模バイオマス発電は海外からの燃料輸入に依存していて、それとは真逆だ。」と指摘する。 余所からバイオマスを大量に運んできて、発電所で燃やし、その電気を使えば「カーボンゼロ」になり、地球温暖化が止まる、などということはあり得ないのだ。 いずれにせよ、化石燃料を減らし、バイオマス発電を増やしたとしても、これだけ使い捨ての弁当容器やコーヒーカップなどを使いまくっていては、エネルギーなどいくらあっても足りない。使い捨てプラスチック製品の生産や廃棄に使われるエネルギー量は膨大だ。 再生可能エネルギーは万能ではないことを肝に銘じ、あくまでも本当に再生できる量だけしかエネルギーを使わないことが重要だろう。
栗岡 理子