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菅政権の「携帯電話料金値下げ」を手放しで喜んではいけないワケ

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現代ビジネス

「最大5割程度の値下がりが期待できる」

 先週水曜日(9月16日)に発足したばかりの菅義偉政権が、早くも目玉政策のひとつ「携帯電話料金引き下げ」の本格的なアピールに乗り出した。 【写真】「ペイペイの毒」に潰されたキャッシュレス企業…その残酷すぎる末路  総理就任2日後の18日、菅氏が官邸に武田良太総務大臣を呼び、トップダウンで値下げを急ぐよう指示したのである。  武田大臣は会談の直後に、「国民生活に直結する問題なので、できるだけ早く結論を出す」としたうえで、値下げ幅について「1割程度では改革にならない。海外では健全な競争を導入して70%下げたところもある」と語り、大幅な値下げの実現に強い決意を表明した。  そこで、筆者が取材したところ、総務省はすでにMVNO(仮想移動体通信事業者、「格安スマホ会社」のこと)を通じた大幅値下げに向けて布石を打っており、「今後3年程度の間に最大5割程度の値下がりが期待できる」と予測しているという。  だが、こうした値下げの加速を手放しで喜ぶのは難しい。というのは、過剰な値下げは、海外勢との技術革新を巡る日本の携帯大手3社の競争力を削ぎ、5Gや6Gといった次世代モバイル通信網の整備が遅れる恐れが出て来るからだ。  そうなれば、製造業やサービス業はもちろん第1次産業も含めた、すべての産業がアフター・コロナ時代の生き残りに不可欠なデジタル革命に乗り後れ、国民がその恩恵を享受できないリスクを膨らませることになりかねない。  「内外価格差」という言葉が存在することが示しているように、歴史的に見て、日本では、携帯電話に限らず、固定電話、電気・ガス、高速道路といったインフラの料金が高かったことは事実である。  筆者も、新聞記者だった1980年代から2000年代初頭にかけて、担当した金融、電気通信、放送のほか、電気・ガス、有料道路、鉄道など、日本の公共料金が押しなべて米国の2倍から8倍程度に達しているといった記事をいくつも書いた記憶がある。

「既得権打破」の思いは総務大臣時から

 そうした中で、光ファイバー網を使った固定通信のブロードバンド分野で2000年代半ば頃までに、先進国で1、2位を争うほど日本の利用料金が大きく下がったのとは対照的に、携帯電話の料金引き下げは遅れてきた。このため、安倍前政権の誕生前から、総務省ではお役人主導で料金引き下げが何度も試みられてきた。  例えば、総務省が2007年6月に公表した「モバイルビジネス研究会」の報告書はそうした試みの一つだ。  この報告書には、料金引き下げの具体策として、「販売奨励金」の廃止・縮小を目指すことのほか、MVNOの参入を加速することや、携帯電話会社の乗り換えを容易にするSIMロックの解除を実現することなどが盛り込まれていた。  これは当時、携帯電話機のゼロ円販売などを可能にしていた販売奨励金の原資がユーザーの支払う通信料金だったことから、頻繁に電話機を買い換える人とそうでない人の間で不公平が生じているとのロジックによるものだ。  だが、当時は、どの施策も、携帯電話事業者だけでなく、携帯電話機を製造・販売していた家電メーカーなどの強い抵抗にあい、なかなか進展しなかった。その状況をつぶさに見ていたのが、当時、総務大臣だった菅総理だ。そうした状況に、菅氏が持論の既得権打破の思いを強めたことは想像に難くない。  携帯電話料金の引き下げは、その後も折に触れて、政治問題化した。2015年9月の経済財政諮問会議の場で、高市早苗総務大臣に携帯電話料金の引き下げを検討するよう指示したのが、安倍前総理だった。このことを記憶している読者は少なくないはずだ。  最近では、2018年8月に、官房長官だった菅総理が札幌市内の講演で、日本の携帯電話の利用料について「今よりも4割程度下げる余地がある」「競争が働いていない」などと述べた。

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