遺品の靴が伝える「重み」 元警察官が開く「生命のメッセージ展」
25日から全国で「犯罪被害者週間」が始まるのを前に、奈良県葛城市の元警察官の自宅で被害者遺族の悲しみを伝える「生命のメッセージ展」が開かれている。理不尽に命を奪われた被害者を表したパネルが展示されており、犯罪や交通事故の悲惨さを伝えている。【田辺泰裕】 展示を開いているのは、羽根康英さん(62)。県警で監察課長や吉野署長などを歴任し、昨年3月に定年退職した。親族を交通事故で亡くし、犯罪被害者支援室長を務めた経験から「遺族が生活を取り戻す支援をするのは重要な仕事」と考え、退職後も精力的に支援活動をしている。 昨年11月、被害者遺族の支援を続けるNPO法人「KENTO」(奈良市)と共に初めて自宅を開放してメッセージ展を開き、約200人が来場した。中でも忘れられないのが、交通事故の被害者の遺族と恩師が展示を通して再会したことだという。事故当時とは違い笑顔で会話を交わす光景を見て「展示会は当事者同士をつなげ、笑顔にすることもできる」と気づき、今年も開催することを決心した。 展示されているのは「メッセンジャー」と名付けられたパネル。被害者の身長の大きさのパネルに写真と遺族が書いた文章が貼られており、足元には遺品の靴が置かれている。羽根さんは靴について「足は文字通りその人の歩みを示していて、独特の重みがある」と語る。 訪れた葛城市の40代の女性は、「このような展示を通して遺族の憤りやつらさを知ってほしい」と涙を見せた。羽根さんは「じっくりと展示と向き合うだけで何かが変わるはず。活動を通して、被害者も加害者もいない世の中を作っていきたい」と力を込める。 25日までの午前9時~午後5時。葛城市長尾282。