なぜ元日本代表MF稲本潤一は「キャプテン翼」作者が代表の”5部”南葛SCへの移籍を決断したのか
ちょうど不惑を迎える2019シーズンにJ1でも、ましてやJ2でもなく、J3の舞台で戦って6シーズン目になる相模原へ加わった理由を尋ねたことがある。 「最初に声をかけてくれて、正式なオファーをくれたから、ですね。最初に声をかけてくれるのはやはり一番嬉しいことなので、あまり迷わずに決めました」 シンプルな言葉から伝わってきたのは、現役の二文字に稲本が抱くポリシーだった。引退という選択はいつでも下せる。ならば愛してやまないサッカーを、しっかりプレーできる自信がある間はとことん続ける――変わらぬ思いが稲本を突き動かしてきた。 その上でクラブ側から期待される役割が、モチベーションをさらに高めてきた。 川崎フロンターレから2015シーズンに加わった札幌ではJ1定着を託され、代表以外で初めてチームメイトになった小野とともにピッチ内外で経験を伝授。3年目の2017シーズンにJ1へ昇格した札幌は、今シーズンもトップカテゴリーで戦う。 相模原では行政や地元のファンを巻き込み、J2クラブライセンス取得へのネックになっていた、スタジアムの設備や練習環境を改善する機運を高めた。最終的にはJ3へ降格したものの、昨シーズンの相模原は初めてJ2を戦っている。 東京都葛飾区出身の高橋さんを迎え入れた2013年10月に、クラブ名称を葛飾ヴィトアードから変えた南葛SCにも、モチベーションをかき立てられる要素がそろっている。 稲本を含めたプロサッカー選手の多くが少年時代に夢中になって読んだ、まさにバイブル的な存在である人気漫画の「キャプテン翼」にゆかりがあり、永遠のヒーロー・大空翼が小学生時代に所属したチーム名を冠しているだけではない。 活動拠点とする東京都葛飾区からJリーグへ、を合言葉に2017シーズンから積極的な補強を展開。そのなかには10年ぶりに現役へ復帰してサッカー界を驚かせ、翌2019シーズンには監督を務めた元日本代表の福西崇史氏も含まれている。 川崎フロンターレでコーチ、下部組織の監督を歴任した、森一哉監督に率いられた昨シーズンは、初めて臨んだ関東サッカーリーグ2部で2位に躍進。鹿島アントラーズや湘南ベルマーレ、栃木SCなどでプレーしたFW佐々木竜太の2ゴールなどで、桐蔭横浜大との入れ替え戦を4-1で制して1部への昇格を決めている。 迎える今シーズンも、DF下平匠(ジェフ千葉)、MF楠神順平(清水エスパルス)、MF安田晃大(愛媛FC)、MF河野広貴(東京ヴェルディ)、FW岡田翔平(ザスパクサツ群馬)ら、前所属がJクラブとなる選手たちとの契約を更新。J2へ降格した仙台を退団していた、日本代表経験を持つ関口の加入も16日に発表されていた。 最終的にはJFLの鈴鹿ポイントゲッターズへ加入した54歳のレジェンド、FW三浦知良の獲得にも名乗りをあげ、交渉には代表取締役の高橋さんが直接出馬。最終候補に残った南葛SCに加わる意気込みを、稲本はインスタグラムでこう宣言している。 「自分の全てをかけてJFL昇格に貢献できるよう日々精進していきたいと思います」