ホンダ400ccV4エンジンの黄金期に活躍した、NC30型VFR400R
最も売れたV4エンジン搭載400ccモデルNC30
NC30型VFR400Rは1988年に発売され、1990年のモデルチェンジで前後のサスペンションがアジャスタブルタイプに変更されている。今回の撮影車は1990年モデルとなり、この後は基本カラーチェンジのみで製造が続けられた。 NC30型のフレームは完全新設計されたアルミツインチューブタイプで、「目の字」構造をもつ異形五角断面材を使用することで当時の750ccクラスに匹敵するものであった。このフレームに組み合わされるフロントフォークは41mm径の初期荷重調整機構付き正立タイプで、リアはプリロードと伸び側減衰力の調整機構付ダンパーユニットを装備したプロリンクリアサスペンションとセンターロック方式を採用したプロアームが組み合わされた。ホイールサイズはフロント17インチ、リア18インチで、5本スポークタイプのアルミキャストホイールにラジアルタイヤが履かされている。ブレーキはフロントに296mmフローティングローターと異径対向4ポットキャリパーを組み合わせたダブルディスク、リアは220mmソリッドローターと片押し2ポットキャリパーの組み合わせとなる。 エンジンはVFR400Fから受け継ぐNC13Eで、ボア×ストロークは52.0×42.0mmの399ccは変わらない。NC21型で360度から180度へと変更されたクランクシャフト角は再び360度へと変更され、ロッカーアームをアジャスト式からダイレクト式へと変更。クラッチにはバックトルクリミッター機構が組み込まれ、ミッションはクロスミッション化されている。最高出力は当時の規制値一杯の59PS/12500rpm、最大トルクは4.0/10000rpmというハイスペックに仕上げられた。その他にも上下二段積みのラジエターや、4-2-1集合の左出しエキゾーストシステムなどの豪華装備が与えられていた。
激戦を戦ったVFRと、戦う場所をなくしたRVF
VFR400Rは1991年に発売された1992年モデルが最終モデルチェンジとなり、1992年6月にその年の鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦する、“OKI HONDA RACING”のRVF750をイメージしたカラーリングパターンを採用したエンデュランス・スペシャルカラーモデルが最後に追加された。そして1994年1月にVFR400Rの後継モデルとなるNC35型RVFが発売され、5年というこの時代のレーサーレプリカとしては比較的長いモデルライフを終えた。 RVFはNC13Eエンジンを継承しながら、VP型キャブレターやダイレクトエアインテークシステムを採用するなどしてブラッシュアップ。フレームは新設計されたアルミツインチューブのダイヤモンド式で、新設計倒立フロントフォークや異径4ポット対向キャリパー、前後17インチホイールなざよ採用していた。しかし、RVFが登場した1994年には既にレーサーレプリカブームは過ぎ去り、VFR400Rが活躍したTT-F3クラスはすでに廃止されていた。そのためサーキットで活躍することはなく、売り上げ自体も大きく伸びることなく2000年代に入ると生産中止となった。 初代のVF400Fから最後のRVFまで、各部のリファインを繰り返しつつ使い続けられたNC13E型エンジンはホンダの400ccクラスの黄金期を作った名機と言えるだろう。そして、そのNC13E型エンジン搭載車の中でも、激戦のTT-F3クラスを戦い抜いたNC30型VFR400Rこそが、ホンダミドルクラスV型エンジン搭載車の象徴であると言えるだろう。
VFR400R主要諸元(1990)
・全長×全幅×全高:1985×705×1075mm ・ホイールベース:1345mm ・シート高:755mm ・車両重量:185kg ・エジンン:水冷4ストロークDOHC2バルブV型4気筒399cc ・最高出力:59PS/12500rpm ・最大トルク:4.0kgm/10000rpm ・燃料タンク容量:15L ・変速機:6段リターン ・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク ・タイヤ:F=120/60-17、R=150/60-18 ・価格:71万9000円(当時価格)
後藤秀之