「ソーラーカー元年」太陽電池で走るEVが欧米で続々生産開始。自動車のスタンダードになるか?
ソーラーパワーで走る電気自動車が今年から欧米で本格的に生産される。オランダのスタートアップ「Lightyear(ライトイヤー)」によるソーラーカー「Lightyear One」は年内に納車される予定で、欧州の街をソーラーカーが走る日も近い。ほかにもドイツやアメリカのスタートアップ企業が今年から続々とソーラーカーの生産を開始する予定で、今年は自動車業界で「ソーラーカー元年」ともいえる年になりそうだ。
オランダのソーラーカーはハイエンド向け
Lightyearが開発した「Lightyear One」は、ルーフにソーラーパネルを搭載した電気自動車(EV)。プラグからも充電するシステムになっているが、太陽電池による発電で、オランダの天候では全体の25%の電力を賄えるという。満充電の航続距離は725km以上。太陽電池の充電1時間で、12kmの走行が可能になるという。充電ポイントへの依存度が下がる上、駐車場で日の当たるところに駐車できるのがメリットだ。 初年度の限定モデルは1台15万ユーロ(約1900万円)とお高め。テスラの「モデルX」の10万ユーロと比べてもかなり値が張るが、技術改善とパートナー企業への製造アウトソーシングにより、2024年には5万ユーロ(635万円)程度の新モデルを投入したい考えだ。初年度の今年は生産台数も946台に限定しているが、2023年頃には生産能力も10万台以上にスケールアップする計画という。
ドイツのSONOはアプリでカーシェアリングも
一方、ドイツのスタートアップ「Sono Moters(ソノ・モーターズ)」は、手の届きやすい価格のソーラーカーを投入する。同社が2019年から予約を開始した「Sion(サイオン)」は、1台25500ユーロ(約324万円)。同社は1モデル・1色のみの販売で、この低価格を実現した。また、既存のテクノロジーを利用している点も価格を抑えるのに寄与している。 Sionは車のルーフだけでなく、ドアやボンネットなど車体のほとんどを使って248枚のソーラーパネルが装備されており、天気のいい日には1日の充電で34kmの走行が可能という。こちらもプラグによる充電を太陽電池が補うような形となり、満充電での航続距離は最大250km。Lightyear Oneに比べると性能が劣るが、欧州の都市生活では十分な航続距離だ。 同社の試みで面白いのは、専用アプリがある点だ。このアプリでは、Sionのバッテリー残量や位置情報が表示されるようになっており、これを使って電力の売買や、カーシェアリングが可能になる。 例えば、Sionは双方向充電ができるため、Sionのユーザー同士で送電・充電したり、他の電気自動車に電力を供給することもできる。その際は、オーナーが電力の値段や販売量を設定できるようになっている。また、誰かにSionを貸し出すことも可能で、アプリを使って貸し出す相手と時間を設定した上で、キーを手渡しせずに相手が車を使えるようになるという。 さらに、位置情報をシェアすることで、誰かをピックアップして相乗りする「ライドシェア」も可能に。こうした機能を利用し、すでにオランダのレンタカー「UFODRIVE」などがカーシェアリング用の車としてSionを採用する動きもみられる。