シフト勤務時間中に「帰る」 歯科衛生士が“トラブル連発”で解雇も…「無効」訴え提訴 裁判所の判断は?
裁判所の判断
Xさんの敗訴である。 ■ 解雇について 裁判所は主に【検温表を提出しなかった】ことに焦点をあてて、解雇権の濫用とは言えないと結論づけている。具体的には「新型コロナウイルス感染症対策の重要性に鑑みると、Xさんが頑固なまでに長期にわたって検温表を提出しなかったことは、医院の存続を危ぶませるほどに悪質である」旨判断している。 筆者は、仮に検温表を提出しない一件がなかったとしても、解雇がOKになったのではと思う。昨今、髪色については比較的自由になってきているので、解雇理由になり得ない可能性があるが、▼「ひま~」とSNSに投稿する▼早退が当たり前だと言わんばかりの発言▼上司を完全無視するなどの態度は、解雇を選択する合理的理由と言えると考えるからである。 ■ 院長の発言は不法行為にあたる? ちなみに、院長の「何でじゃねえんだよ!」発言について、裁判所は「OK」と判断している。その理由は、「(Xさんの言動は)あたかも院長の怒りをあえて惹起(じゃっき)させるかのように継続されたのであるから、院長の語気が多少強くなったとしても社会通念上不相当とは言えない」というものだ。 冒頭で述べたように、現在の法制度では解雇の要件が極めて厳しいので、裁判所は「解雇無効」と判断するケースが多い。しかし今回の裁判は、ここまでのレベルの不適正な社員であれば解雇がOKになることを示した一例である。参考になれば幸いだ。 林 孝匡(はやし たかまさ) 【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。情報発信が専門の弁護士です。 専門分野は労働関係。好きな言葉は替え玉無料。
林 孝匡