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巨大銀河団に多数の高密度ダークマター、宇宙論揺るがす報告

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ナショナル ジオグラフィック日本版

現在標準とされる宇宙モデル「ラムダCDM」と大きく矛盾

 人間が一人では生きられないのと同じように、銀河も単独では存在できない。銀河には重力により互いに引き合う傾向があり、ときに巨大都市のような集団を形成することもある。1000個もの銀河からなる、太陽の1000兆個分もの質量をもつ巨大銀河団だ。 ギャラリー:ハッブル望遠鏡 50の傑作画像  しかし、私たちが目にできる星々の質量は、銀河団全体のごく一部にすぎない。銀河団の質量の多くは、目には見えない謎だらけの「ダークマター(暗黒物質)」にあると科学者たちは考えている。ダークマターは、銀河団やその中に含まれる銀河などを球状に取り囲んでいると考えられている。こうした球状の領域は、銀河団ハロー、銀河団の中にあるものはサブハローとそれぞれ呼ばれる。  天文学者たちは何十年も前から、ダークマターが宇宙誕生の際にのどのように機能し、宇宙の構造を形作ってきたかを解明しようとしてきた。だがしかし、9月10日付けで学術誌「サイエンス」に発表された論文により、現在標準とされる理論と大きく矛盾する観測結果が示された。  今回の研究では、銀河団の中を通って地球に届いた光がどのように曲げられているかを、11の巨大銀河団について調べている。その結果、これらの銀河団に含まれる密度の高いダークマターの領域が、標準モデルにもとづいたスーパーコンピューターの予測より10倍以上も多かったと示唆されたのだ。 「これほどの食い違いが見つかると、多くの場合、従来のモデルを修正する必要が出てきます」と、論文の共著者である米エール大学の理論天体物理学者プリヤムバダ・ナタラジャン氏は言う。「けれどもまれに、そうした食い違いが新しい理論への道を示してくれることがあります。科学史の中でも非常にまれなことですが」

宇宙に存在する巨大なレンズ

 この研究は、現在の宇宙論の標準モデルとされる「ラムダCDM(コールド・ダーク・マター)」モデルを検証した最新のものだ。  ラムダCDMモデルによると、宇宙に占める物質とエネルギーの総和のうち、惑星、恒星、銀河、生物など、私たちが目にするすべてのものを構成する「バリオン物質」は、5%にも満たないという。宇宙の大部分にあたる約68%を占めているのは、宇宙膨張を加速させる謎の反発力「ダークエネルギー」であると考えられ、ギリシャ文字の「Λ(ラムダ)」という記号で表される。  宇宙の残りの27%を占めているのがダークマターだ。このモデルによれば、ダークマターは質量を持ち、重力場を作れるが、自身で反応したり光を放出したりすることはなく、通常の物質とは重力でのみ相互作用する。  ラムダCDMモデルを検証するため、イタリアのボローニャ天文台の天文学者であるマッシモ・メネゲッティ氏が率いる研究チームは、これまでに知られている最大級の銀河団について、物質が周囲の時空を歪ませる「重力レンズ」という現象を観測した。  トランポリンの上に置いたボウリングのボールが周囲の布を湾曲させるように、物質は周囲の時空を歪ませる。歪んだ時空はまるで巨大なレンズのように通過する光を曲げるため、銀河や銀河団のような天体は、その後ろにある遠方の星の明るさや見え方を変えてしまう。  メネゲッティ氏の研究チームは、なかでも銀河団の中にある小さくて強い重力レンズの効果に着目した。11個の銀河団の地図を作成し、小さくて強い重力レンズを数え上げたところ、予想の10倍以上の数が見つかった。この観測結果は、ダークマターのサブハローがコンピューター・シミュレーションの予測よりはるかに高い密度で銀河団の中に存在することを示唆しており、現在の標準とされるラムダCDMモデルと矛盾していた。

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