【30代のシネマナビ】感動の実話を映画化。『キーパー ある兵士の奇跡』をレビュー!
海外エンタメ好きなライター・今 祥枝が、30代女性におすすめの最新映画をピックアップ! 今回は、英国の国民的ヒーローとなったドイツ人捕虜の感動の実話『キーパー ある兵士の奇跡』をご紹介。オリンピックの開催に揺れる今だからこそ、本作を通してスポーツマンシップについて考えてみては? 自宅で見るなら…おすすめ海外ドラマ一覧 ナビゲーター【今 祥枝】 海外エンタメが大好きなライター。一年365日、映画&ドラマざんまいの日々。
『キーパー ある兵士の奇跡 』
世界で最も歴史があるイングランドのサッカーのFAカップ。1956年の決勝戦で、試合の最中に首を骨折していたにもかかわらず、名門チームを優勝に導いたゴールキーパー、バート・トラウトマンの名は永遠に歴史に刻まれることとなった。 『キーパーある兵士の奇跡』は、不屈の魂を持つ国民的ヒーロー、トラウトマンの波乱の半生を描いた感動ドラマ。スポーツが社会に果たし得る重要な役割を伝えて、終盤では伝説の試合のシーンに胸が熱くなる。オリンピックの開催に揺れる今だからこそ、スポーツマンシップについて考えてみるのもよいのでは。 もうひとつ、本作が今の時代に特別な意味を持つ理由。それはトラウトマンがドイツ人捕虜で、ナチスの兵士だったことにある。たまたま収容所でサッカーをしていたところ、地元のサッカーチームの監督ジャックの目に留まったことから彼の人生は大きく変わることになる。 敵国の元兵士を見る目は、当然ながら冷たい。ジャックの家族やチームのメンバー、ユダヤ人コミュニティの反発は激しく、試合に出ればブーイングの嵐。それでもトラウトマンはこの地にとどまり、真摯に、誠実に、自分ができる唯一のこととしてサッカーに打ち込み、思いをプレーに託す。その姿が愛する女性の心を動かし、やがては社会全体が敵と見なしていた相手を、自分たちと同じ“人間”なのだと理解し、許し、和解への道を切り開いていく。 劇中、トラウトマンの英国人の妻マーガレットが世間に対して「許しを与えるより、憎むほうが簡単だ」と訴える言葉が胸に響く。怒りや憎しみよりも、愛のほうがはるかに偉大。シンプルだけど、そう信じる気持ちがまずは大切なのかも。 監督/マルクス・H・ローゼンミュラー 出演/デヴィッド・クロス、フレイア・メーバー 公開/新宿ピカデリーほかにて、10/23より