『バランワンダーワールド』プレイレビュー。3Dアクションだけど要求されるのは操作の巧さよりも謎を解くチカラ!
文:ライター 齋藤モゲ スクウェア・エニックスより2021年3月26日に発売(Steam版は3月27日配信)された、Nintendo Switch/PS5/PS4/Xbox SeriesX|S/Xbox One /PC(Steam)向けの“ワンダーアクション”、『バランワンダーワールド』。体験版もプレイした担当ライターが、PS4版の製品版をプレイした感想を記していく。 【この記事の画像をもっと見る】 体験版を経て行われた製品版のチューニング まずは、本作がどのようなゲームなのか、簡単におさらいしていこう。 ざっくり言えば、本作は“衣装”の切り換えによって異なるアクションが出せるようになるプラットフォームゲーム(移動とジャンプで足場=プラットフォームを進みながら目標到達を目指すゲーム)。80種類以上の衣装とそれに対応するアクションが用意されており、状況やステージの仕掛けに合ったものをチョイスして、ステージの探索を進めていくという作品になる。詳細に関しては、関連記事を参照してほしい。 『バランワンダーワールド』魅力解説&攻略ガイド。心象世界を舞台にした完全新作ワンダーアクション、いよいよ開幕! https://www.famitsu.com/news/202103/25216425.html 体験版のレビューはこちらとなるが、今回は製品版をプレイして感じた体験版との差、そしてより長い時間プレイして見えてきたことを中心に語っていきたい。 2021年1月に配信された体験版をプレイしていた筆者は、“ひさしぶり”という感覚で本作の製品版に触れることになったわけだが、プレイを始めてさっそく、「お!」と思わされた。その理由は、主人公の移動速度が向上していたから。体験版を遊んだ人から「移動速度をもっと速くしてほしい」という意見が多く寄せられたらしく、アップデートでその点も含んだ改善を行い、全体的にテンポアップさせたことは、開発陣インタビューでも明言されていた。 『バランワンダーワールド』はバランスを重視し、数々の挑戦に取り組んだ最新のプラットフォームゲームだ。開発陣に本作の狙いをインタビューで直撃! https://www.famitsu.com/news/202103/26216444.html ※移動の操作性、カメラ追尾、そのほか難易度に関係する調整を行ったパッチが配信されているので、製品版をプレイする前にゲームのアップデートをオススメする。 それは、体験版と製品版の両方をプレイしていれば確実に感じ取れるもの。筆者の体感では、体験版の1.1~1.2倍ほど、スピードが上がっているように感じられた。快適性の向上にはつながっているが、いい意味でゲームとしてのフィーリングとして大きく変わった印象は受けず。あまりに高速化してしまうと、それはそれでプラットフォームゲームとしてあわただしいものになってしまうので、この程度に留めたのだろう。 移動速度と同様に、体験版と明らかに違いが見られたのは、カメラワークだ。体験版では、若干意図せぬ形でカメラが動いてしまっている部分があったように見受けられたが、そこはおおむね調整された様子。“足場の下や頭上がどうなっているのか、のぞき込む”という行動を頻繁にくり返す本作においてカメラワークは重要な要素なので、これは素直に改善を喜ぶべきところだろう。 アクションゲームでありながら、考えることが楽しい作品 体験版でもプレイできた第1章も含め、序盤は「簡単だなあ」という印象を持ちながら章を順番に進めていったが、第4章あたりから敵の強さやステージギミックの両面において、じわじわと難度が上がっていくように感じられた。 まずは、敵の強さに言及しよう。本作には、メタAI(プレイヤーのスキルや状況、行動を判断して、敵の配置や難度などのゲーム要素を調整するAI)を本作用に調整した“バランスAI”によって敵を制御しているという特徴がある。その話をインタビューで聞いたときは正直、「ホントに!?」と思ったのだが、遊び続けることでその意味を感じられるようになった。 筆者のケースでは、電撃攻撃を得意とするジェリージョルトという衣装を使い続けて敵を攻撃していたのだが、しばらくすると突然、敵が電撃攻撃を仕掛けてくるように! 「このまま続けると厄介なことになるかもしれない」と危機感を持ち、以降は踏みつけで攻撃するようになったら、今度は空を飛ぶ敵や、頭上にツノを持ち踏みつけるとダメージを受ける敵が増えた(ような印象を持った)。 筆者が出くわしたような状況がどこまでAIの制御によるものなのか、微妙に判断がつかないところではある。しかし、ひとつ言えるのは、多彩な衣装をまんべんなく使って敵を倒すことも本作を遊ぶうえで重要になるということだ。 3Dアクションゲームとしてはオーソドックスな本作だが、通り一遍でサラリと遊んだだけではわからないような仕掛けを組み込んでいるのは非常に挑戦的だ。これは余談だが、本作の敵の強くなりかたを体感しながら、なんとなく同社の『アストロノーカ』(1998年に発売された作品で、筆者は名作だと思っている)を思い出したりもして、ちょっと懐かしい気持ちにもなった。 ステージギミックも、なかなか考えられている。本作では、ステージ各所に配置されている“バランスタチュー”を一定数集めることでつぎの章が開放される。すべてのバランスタチューを集めることもひとつのやりこみ要素となっているが、バランスタチューが見えていても、特定の衣装がないと取れないものも存在する。そのため、1回のプレイではバランスタチューをコンプリートすることができないのだ。 たとえば、第1章のアクト1ですら、第6章をクリアーしたあたりでようやくコンプリートできるという状態になっている。また、「特定の衣装」とは言ったものの、それはひとつに限らないため、人によって異なる攻略法が存在するというわけだ。 “見えているけど、どうしても取る方法が思いつかない”というものは、バランスタチューだけに留まらない。それは衣装にも当てはまるのだ。本作の衣装は、“世界の住人のチカラを借りる”という設定なので、衣装のある付近にはその世界の住人がいるのだが、ときどき“住人はいるけれど、衣装が見つからない”ということが発生する。 前述のように“特定の衣装を持っていなければその場所に到達できない”というケースもあるので、そのタイミングで衣装をゲットできるかどうかはプレイの進捗次第になる。 本作はアクションゲーム然とした顔をしているが、筆者の印象で言えば、どちらかと言えばパズルやクイズに近い部分を強く感じた。ヒントも控えめに設定されていることもあり、「わかった! この衣装が使えるんだ!」と閃く瞬間が、本作の醍醐味のひとつになっているのだ。逆に、攻略サイトなどを見ると楽しさが半減するとも言えるので、そこは注意したほうがいいかもしれない。 “アクション”ではない部分へのチカラの入れ具合はかなりのもの おもなゲーム性について皆さんにお伝えしたいところは前述の通りだが、それ以外にも伝えたいことがある。それが、本作の音楽だ。各章をクリアーしたときに流れるご褒美のミュージカルシーンやステージのBGMなど、舞台ミュージカルをモチーフにした作品なだけあって、とにかく本作の音楽の質は高い。 キャラクターのデザインや世界観も相まって、個人的にはディズニー作品に似た雰囲気を感じた。気になる方はぜひ、こちらで聴けるサンプルを一度チェックしてほしい。 『バランワンダーワールド』オリジナルサントラが本日(3月31日)発売。ゲーム内楽曲93曲を収録したCD3枚組 https://www.famitsu.com/news/202103/31216907.html 『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のソニックなどをデザインしたアーゼストの大島直人氏によるアートデザインも抜群だ。本作の各章のストーリーは、冷静に考えるとけっこう重たいエピソードも多いのだが、チャーミングなキャラクターがその重たさを感じさせないものにしているのも白眉。 また、本作を語るうえで、謎の生物“ティム”の育成要素は欠かせない。ティムを育成することによって、冒険中に敵を攻撃したりアイテムを拾ってくれたりと、ちょっと役に立ってくれるというメリットは発生する。しかし、がんばって育てようとしなくても、いるだけで微笑ましい気分になるのが、ティムのいいところ。 筆者は、拠点の“ティムズエリア”にティムたちを放置していることも多いのだが、たまに画面を見るとティムたちが楽しそうに遊んでいて、とても和む。言ってみれば、ハムスターを飼っているような気分になる。こういう、ゲーム的にはわりとどうでもいい(!?)ところに労力を割いている点も、けっこう好ましい。 そろそろまとめよう。言い方はとても難しく、悪いように捉えてほしくないのだが、筆者個人の見解で本作を総括すると、本作は“大人が安心してキッズに遊ばせたいと思えるゲーム”というものになる。 当然ながら大人でも楽しめる作品なのだが、オーソドックスなゲームシステム、ワンボタンのアクションというシンプルな操作性、考えることが楽しいゲーム体験、老若男女に受け入れられるキャラクターや音楽、ちょっと考えさせられるが押しつけがましくないテーマや物語など、どれを取っても“キッズに遊ばせたい”と思わせる要素ばかり。 さらに言えば、ふだんあまりゲームで遊ばない人にも向いているかもしれない。マルチプラットフォームなので、好きなハードで遊べるのも大きい。また、ラスボスを倒したあとは各章にアクト3が出現。心象世界が変化し、アクト3でしか入手できない衣装も登場するので、衣装のコンプリートを目指すという長く遊べるやり込み要素もある。 昨今は“狩り”に夢中になっている人も少なくないと思うが、それとは異なるベクトルのテイストのゲームを楽しみたくなったら、本作をチョイスするのもありなのではないだろうか。
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