【神戸刑務所編スタート!】ヒガシエニシエ 嗚呼!! 花の神戸プリズン《さかはらじん懲役合計21年2カ月》
元ヤクザでクリスチャン、今建設現場の「墨出し職人」さかはらじんが描く懲役合計21年2カ月の《生き直し》人生録。カタギに戻り10年あまり、罪の代償としての罰を受けてもなお、世間の差別・辛酸ももちろん舐め、信仰で回心した思いを最新刊著作『塀の中はワンダーランド』で著しました。実刑2年2カ月! じんさん、帯広刑務所を出所したらと思いきや、またまた「ワル」をしでかして今度はヒガシからニシヘ! 今度は神戸刑務所に3年間お世話になります。 今日は懲りないじんさん、神戸へ向かう新幹線のなかのお話です。 いよいよ神戸刑務所編スタートします。 この記事の写真はこちら ■嗚呼!!花の神戸プリズン めでたく帯広刑務所を出所したとはいえ、このときのシャバでの生存記録はわずか10カ月間。シャバ見物に、冷やかしで来たようなものであった。そして、その間に起こした物語のあらすじは以下の❶と❷通りである。 ❶『ハートブレイクなUターン』 女とフィリピンに帰る飛行機の中で、パーサーとケンカになったボクがアキノ国際空港に着くと、待ち構えていたポリスに拘束されてしまう。そこで巻き起こす騒動の話。 ❷『ヘリも来た、お騒がせ籠城事件』 無免許運転で衝突事故(ひき逃げになる)を引き起こしたボクを、舎弟の一人が助けようと田無警察のマル暴へ掛け合うが、一蹴されてしまう。拳銃を出すという話をしていたことから田無警察は拳銃を持っているボクを、ジュラルミン盾を持った警官たちに包囲させ、パクろうとして大騒動する話。 そんな物語を演じて、大好きな塀の中へまたまた戻っていくのである。 3年の実刑判決をちょうだいしたボクは、控訴期限ギリギリまで警察に据え置かれ、そのあと、身柄を八王子拘置所へ移された。そしてそこに一週間もいないうちに、分類の行われている府中刑務所へ移送された。 このようにしてボクは、お決まりのコースを辿って「監獄」という地獄の釜の中へと堕ちていくのであった。 府中刑務所の送り房で数カ月が経過し、やって来た移送当日の朝、「お前たちを神戸刑務所へ移送する」と、官のお偉い人からの言い渡しを受けたボクたち移送組六人は、護送バスに乗って、朝の通勤で混雑する東京駅へやってきた。 腰縄とロープで数珠(じゅず)繋ぎにされた珍妙な格好の六人組は、手錠のはまった両手で手荷物を引きずるように持ちながら、ただならぬ様相をしてゾロゾロと、新幹線ホームに向かって歩いた。 この光景は一見してユーモラスに見えなくもないが、やはり異様であり、行き交う通勤客たちは驚きと好奇な目で通り過ぎて行く。 新幹線ホームで数珠繋ぎにされたボクたちが待っていると、ボクたち護送組のを小さな女の子と手を繋いだ母親らしき二人が通りかかった。 その女の子の円(つぶ)らな瞳がボクを見ていたので、ボクが「おはよう」と、笑って挨拶をすると、女の子は恥ずかしそうな顔をして、その母親らしき人の顔を見上げた。 「おはようと言われたら、おはようと言うのでしょう」 その母親らしき人が女の子に微笑みかけながら言った。すると、女の子の小さな口元が開き、小さな声で恥ずかしそうに「おはよう」と、ボクに挨拶を返してくれたのだ。 ボクたちが何者なのか、その母親らしき人はわかっていたのに、女の子にきちんと、躾(しつけ)として礼儀作法を教えていた。そして自らも会釈すると、手をしっかりと握り合ってボクたちの前を去っていった。 ボクは一瞬であっても、この素晴らしい母子と出会い、触れ合うことができたことに感謝した。 まさにこれこそが、人生の出会いの素晴らしさだという感慨を抱き、ほのぼのとした気持ちにさせられた。