苦い春「二本柱」への糧に 福岡大大濠・馬場投手 選抜高校野球
二回1死二塁、真ん中に入った直球を東海大相模(神奈川)の門馬功選手(3年)に思い切り引っ張られた。福岡大大濠の先発、馬場拓海投手(2年)はライナー性の打球が左翼席に飛び込むのを見送るしかなかった。そのまま交代を告げられマウンドをエースの毛利海大投手(3年)に。憧れの甲子園。初の先発マウンドは苦いものになった。 【今大会のホームラン】 福岡大大濠は好投手の呼び声高い毛利投手に注目が集まる中、馬場投手も昨秋の九州地区大会福岡県予選の決勝で完投勝利。九州地区大会の準決勝では宮崎商打線を八回1死まで無安打に抑える快投で1安打完封の離れ業をやってのけ、彗星(すいせい)のように頭角を現した。 ただ、後ろにはいつも毛利投手がいた。馬場投手が投げている時は勝負どころと見るや「この回は思い切り行け」と声をかけ、事細かにアドバイスを送った。この日の試合前は東海大相模の強力打線を相手にする馬場投手に「とりあえず思い切って投げろ。後は俺がいるから」と声をかけてマウンドに送り出した。 「期待に応えよう」。そう意気込んで立った先発マウンドだったが、序盤から高めに浮くボールを次々にはじき返された。二回途中で4失点。「すみません」。交代する際、毛利投手に謝ることしかできなかった。「しょうがない。ここからしっかり応援して盛り上げていこう」。先輩の言葉通り、その後はベンチからナインの奮闘を願った。 毛利投手は二、三回こそ失点したものの、四回以降は6イニングを1失点。ベンチから見る先輩の背中はやはり大きかった。しかし、チームは0―8で敗退。4年ぶりのセンバツ8強を果たしたものの、福岡大大濠として史上最高の4強には届かなかった。 「やっぱり気持ちだけでは抑えられないんだなと分かった」。試合後、馬場投手はそう言って唇をかんだ。八木啓伸監督(43)は馬場投手を先発起用した理由について「大会を勝ち上がるにはエース格の投手が2人以上必要。うちは馬場で勝つことを前提にやっている」と語り、毛利投手と馬場投手の二本柱でより高みを目指していたことを明らかにした。 この日は期待通りの投球ができなかった馬場投手だが、大舞台で成長の糧を得た。夏は先輩と並び立つ「エース」としてまた帰ってくる。そう誓って甲子園を後にした。【大坪菜々美】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。