免疫機能も向上させる睡眠の役割とは? 脳の老廃物排出・感情整理・パフォーマンス発揮など 東京家政大・岡島義准教授が講演 大塚製薬・ネオジャパンのセミナーで
睡眠不足による経済損失は約15兆円
大塚製薬とネオジャパンは10月28日、テレワーク時代の睡眠習慣をテーマにした経営者向けオンラインセミナーを開催し、東京家政大学の岡島義准教授が社員のパフォーマンス低下につながる睡眠不足・睡眠負債のリスクや睡眠をしっかりとるコツについて講演した。 「睡眠不足による経済損失は約15兆円で日本が世界一で非常にもったいない。厚労省はタバコの害による総損失額を2・5兆円と算出しており、タバコの6倍以上の経済損失を与えている」と指摘し、その一因に“活動するから眠る説(受動的な睡眠)”の流布を挙げる。 「“たくさん活動すれば結局は眠れるのだから睡眠は削れ”という発想だったのが、今は“しっかり眠るからこそ日中のパフォーマンスが上がる”という能動的な睡眠の考え方が主流になっている。睡眠中心の生活に変えることがポイント」と語る。 岡島准教授によると睡眠には ・免疫機能の向上(リンパ系) ・日中に溜まった脳の老廃物排出(グリンパ系) ・記憶の定着と向上 ・ハッピー感情の増加と不安感情の低下 ・パフォーマンス向上 の5つの役割がある。 睡眠不足になると「脳の老廃物が全部排出される前に新たな老廃物が溜まりアミロイドβが蓄積されて認知症のようになることも分かっている。レム睡眠も重要。“レム睡眠は夢をみているから起きている”と言われる方もいるが感情整理のために役立っている。睡眠時間が短くなるとレム睡眠も必然的に少なくなる」という。 免疫機能の向上については、睡眠時間が短くなるにつれ風邪をひく回数が上がる研究結果を紹介。「7、8時間眠っている人を基準とした場合、5時間以下の睡眠の人はインフルエンザや肺炎にかかるリスクは1・5倍になるという研究もある。さらにインフルエンザワクチンの効果も睡眠不足だと効果が半減してしまう」と述べる。 睡眠不足は高血圧や肥満にも影響をおよぼすが、加齢とともに睡眠時間は短くなることから高齢の場合は睡眠時間があまり影響しないとの説もあり「働き盛りの人ほど高血圧や肥満の影響は睡眠不足によるところが多いとも言える」との見方を示す。 睡眠不足になると記憶力や集中力も落ち込む。加えて「注意欠陥・多動性障害(ADHD)の方たちと似たようなことが睡眠不足で起こることが分かっている。電車で肩がぶつかってすぐに“切れる”のも睡眠不足からきている可能性がある」と指摘する。 睡眠をしっかりとるコツについては「朝日をしっかりと浴びると同時に朝食をしっかりと食べるってことが重要。これによって朝、中枢時計が整ってさらに末梢時計もリセットされる。中枢時計と抹消時計が一致すると睡眠の質が一気に上がる。さらに運動不足になると質が落ちるので中強度・息が上がるぐらいの運動を毎日のようにやっていただくのが良いと思う」と語る。 セミナーでは、新型コロナウイルスの影響でテレワークなど働き方の変化や慣れない環境からのストレスなどで働く人の睡眠の質の低下に警鐘を鳴らず。 大塚製薬とネオジャパンは、健康経営の推進に向けて働く人の健康管理を支援するサービス「健康サポートプラス」を通じ「睡眠改善プログラム」を提供している。