激増する闇バイトの犯罪:「楽な金もうけ」が生む悲劇
逮捕されると初犯でも厳罰化傾向に
警察庁組織犯罪対策課が公開した「2023年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」によると、闇バイトの中枢被疑者(首謀者)として逮捕されたのは49人で、全体の2%ほどに過ぎない。一方、闇バイト要員である受け子や出し子は1856人逮捕されており、総検挙人数の75.6%を占めている。 昨今、闇バイト従事者が逮捕されると、初犯者でも一般予防の観点から実刑は免れず、多くの場合、刑事施設に収容される。 筆者が弁護士を通して話を聞いた元検察官は、末端従事者の厳罰理由について、次のように述べている。 「受け子・出し子・掛け子は末端の利用される存在であるとはいえ、他方、特殊詐欺組織の中では受け子・出し子・掛け子があるからこそ犯罪が敢行されるから、役割の重要性は否定できず、厳罰の必要性は末端でも変わらない」(※2) 罪を犯した18、19歳を厳罰化する少年法が改正された2021年以降、闇バイトに関与した18歳以上の特定少年は逆送優先(家庭裁判所が刑罰を科すべきと判断した場合に事件を検察官に送ること)となっており、刑事裁判で裁かれる。少年でありながら厳罰化傾向にあるのだ。 (※2) 『闇バイト──凶悪化する若者のリアル』祥伝社新書
初犯者の厳罰化が招く再犯の可能性
しかし、筆者は初犯者の厳罰化に反対である。その理由として、一つには社会にも責任があるからだ。教育課程で情報リテラシー教育やキャリア教育が十分になされてこなかったため、闇バイトに対する大人の知識が不十分であることから、子どもにも注意喚起ができないという問題がある。 二つ目の理由は、歴史をひも解くと自明のことだが、厳罰化で犯罪は抑制されないからだ。特殊詐欺などの闇バイトで逮捕されたら、初犯でも確実に実刑となり、大学生なら退学、勤め人は解雇される。金融機関などのデータベースに反社会的勢力として登録されると、刑事施設から出所後も、銀行口座が開設できず携帯電話やクレジットカードなど各種契約が難しくなる。成人だと、ネット上にデジタルタトゥーとして名前が残り、就職や結婚にも支障を来す恐れがある。その結果、希望を失って自暴自棄になり、再犯率が上がり、新たな被害者を生むという負の連鎖が断ち切れない。更生させるどころか、将来的に成功する見込みのない狭い道に追いやることになり、裏社会の人口を増やすだけになってしまう。 このような理由から、初犯者への厳罰化が闇バイトへの応募者を減らせるとは考えられない。更生させるのであれば、社会は再チャレンジの機会を認めて支援するべきではないだろうか。