こっそりサクッと…都市のタヌキとアナグマ、気遣いの食生活 農工大
野生動物の活動が都市部にも及び、農作物の被害や鳴き声の騒音、交通事故など、人間への影響をしばしば見聞きする。一方、動物たちは都市部にいることでどんな影響を受けて暮らしているのだろうか。その理解の手掛かりとなる成果を、東京農工大学などの研究グループが発表した。タヌキとニホンアナグマが、人目を避けるような時間帯と場所で、短時間に食事を済ませているというのだ。
きっかけは犬の散歩
都市化が影響する程度は、野生動物の種によって異なる。海外ではさまざまな生物種について、大規模都市開発による行動変化を調査することがあるのに対し、日本では昆虫や鳥の例はあるものの、哺乳類では行われてこなかった。 そこで、東京農工大学大学院グローバルイノベーション研究院教授の小池伸介さん(生態学)らは哺乳類に注目し、生きる上で重要な食事の行動を調べることにした。タヌキとニホンアナグマについて、都市部と山間部で果実の食べ方に違いがみられるかどうかを観察した。タヌキは都市部に多く生息する野生動物の代表格で、ニホンアナグマは最近、都市部に進出してきた動物だという。 この研究は、犬の散歩という日常のひとこまから始まった。同大大学院連合農学研究科博士特別研究生の大杉滋さんは、飼い犬が道端の木の実を食べる行動がずっと気になっていたそうだ。小池さんに相談し、さまざまな動物が落ちている木の実を食べる様子を調べることにした。 調査2年目のこと。野生のイノシシが調査対象の樹木を頻繁にひっくり返してしまうため、対象地域に柵を設けて入り込まないようにした。すると、動物たちの行動パターンが大きく変化した。「イノシシを排除したことで、他の動物が食事の場所や時間を変えた」(小池さん)。環境の変化によって動物たちが食事行動を変えるのではないかと考え、別の場所でも調査を重ねることにした。
夜のうちに、すばやく
小池さんらは人間活動が活発な都市部の森林と、人間活動がほとんどない山間部の森林で調査した。都市部は東京都三鷹市にある国際基督教大学のキャンパス、山間部は八王子市の森林総合研究所多摩森林科学園の試験林を選んだ。タヌキとニホンアナグマが木から落ちた果実を食べる様子を、体温を感知できるカメラで撮影した。