[2020年映画興行総括] コロナ禍の1年。映画興行は『鬼滅の刃』の年だった。が、それ以上に洋画不在の年となってしまった。『パラサイト』で好調な出だし、だったのだが…。
文:大高宏雄(映画ジャーナリスト) ( ぴあアプリ「大高宏雄 映画なぜなぜ産業学」から転載) 【全ての写真】2020年映画興行総括。コロナ禍の1年 全く、コロナ禍によって、想像を絶する年になった。「想像を絶する」。ときにオーバーにも感じるこの言葉が、何の誇張も違和感もなく、今は使える。その2020年の映画界、今回もいつもどおり、そのなかの映画興行について書く。それも洋画中心だ。まずは、以下の数字を見ていただこう。作品別の最終興収順位である(2019年11月末~2020年11月中旬公開作品対象、数字は一部推定)。ちなみに、今年の国内の映画興収は、推定で1350億円あたりとなる見通し(正月作品の興行によって、数字は変わる可能性がある)で、これは昨年の52%ほどにあたる。よく、ここまで踏ん張ったとは言えるが、それは『鬼滅の刃』というとてつもない作品があったからという以外ない。 ☆邦画 興行収入ベスト10 1 劇場版『鬼滅の刃』無限列車編 350億円~ 2 今日から俺は!!劇場版 53億7千万円 3 コンフィデンスマンJP プリンセス編 38億4千万円 4 映画ドラえもん のび太の新恐竜 33億5千万円 5 事故物件 恐い間取り 23億5千万円 6 糸 22億4千万円 7 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 21億円~ 8 カイジ ファイナルゲーム 20億6千万円 9 劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]」III.spring song 19億5千万円(現時点) 10 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング 17億9千万円 (文化通信社調べ) ☆洋画 興行収入ベスト10 1 アナと雪の女王2 133億7千万円 2 スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け 73億2千万円 3 パラサイト 半地下の家族 47億4千万円 4 TENET テネット 27億2千万円 5 キャッツ 13億5千万円 6 フォードvsフェラーリ 9億6千万円 7 ジュマンジ ネクスト・レベル 9億3千万円 8 2分の1の魔法 8億7千万円 9 1917 命をかけた伝令 8億4千万円 10 ミッドサマー 7億1千万円 (文化通信社調べ) ここでは『鬼滅の刃』には触れない。多くの映画館の救世主であったことは間違いないが、2020年は、この作品だけではない。とくに触れたいのは洋画である。国内における韓国映画の最大ヒットになった『パラサイト 半地下の家族』にしても、配給会社の営業担当者は、この作品の存在自体がすでにかなり以前の感じがしてならないと言っていた。これは象徴的な言葉だろう。考えてみれば、今年の映画界最初のトピックは、『パラサイト~』だった。もはや、誰も語らない。忘れられたようだ。コロナ禍以前にもあった情報の消費速度の速さが、恐ろしいほどに進んでいる。もちろん、『パラサイト~』のみの話ではない。このような情報の尋常ではない速度感は、映画だけではないコロナ禍が露わにした一側面だ。洋画の作品の10本を見て、何を思うだろうか。このような作品が、今年はあったのである。改めて、胸に刻んでもらっても罰はあたらない。