東電の株主代表訴訟、来年6月に高裁判決 地裁は13兆円の賠償命令
東京電力福島第一原発事故をめぐり、東電の株主が旧経営陣5人に対し「津波対策を怠って会社に巨額の損害を与えた」として、計23・4兆円を東電に賠償するよう求めた株主代表訴訟の控訴審が27日、東京高裁で結審した。判決は来年6月6日に指定された。 【画像】原発事故後の記者会見で報道陣に囲まれる東京電力社長(当時) 一審・東京地裁判決は「巨大津波を予見できたのに対策を先送りした」として、勝俣恒久元会長(10月に死去)ら4人に連帯して13兆3210億円を支払うよう命じた。国内の民事訴訟で出た賠償額としては過去最高とみられ、株主と旧経営陣の双方が判決を不服として控訴していた。 株主側は27日の弁論で、2002年に公表された国の地震予測「長期評価」などに基づき、旧経営陣らは「過酷事故が起きる可能性を認識できた」と主張。設備への浸水を防ぐ「水密化」をしていれば事故は防げた、と改めて訴えた。 また、原告2人が「原発を保有する企業の経営者には大きな責任がある」「公正な判決を」などと意見を述べた。 一方、旧経営陣側は長期評価について「科学的信頼性はない」と述べ、水密化をしていても事故は防げなかったと反論した。「被害の重大性を理由に、後知恵的な思考に陥ることは慎まなければいけない」とし、被告らの賠償責任を認めた一審判決は誤りだと訴えた。 閉廷後に会見した原告の武藤類子さん(71)は「被害はどんなに甚大であったか、一体何を奪われたのかを裁判所にわかってほしいと思って、意見陳述した」と語った。(米田優人)
朝日新聞社