ボブ・ディランが全曲の著作権を売却! もう歌えなくなる?
ディラン自身の歌声を使うのは簡単ではない
Q6 では、ディランの曲が映画の主題歌で使われたり、ちょっと微妙な日本語歌詞で誰かがカバーしてたり、ドンキのCMやパチンコ機種の効果音で使われたり、なんてことが増えるんですか? ノーベル賞作家なのに!? A6 すごいな、そのパチンコ台。まあ、そう無軌道なことをするとも思えないが、増えるかもしれない。ただ、実はディラン自身の歌声を使うのはそう簡単ではない。というのは、そこには音楽著作権とは別な原盤権といわれる権利があって、今回は譲渡されていないのだ。 もう少し説明すると、今回譲渡された「音楽著作権」とは、あくまで作詞・作曲に対する権利なのだ。曲を演奏したり放送したり音楽配信したりするときに、この権利者の許可がないと使えないのは説明した通りで、それは日本でいえばJASRACなどが窓口として管理している。 一方、ディラン自身が歌って演奏したレコーディング、つまり音源には「著作隣接権」という別な権利が生まれる。米国では録音物への著作権と呼んで位置付けが少し変わるのだが、基本は同じだ。つまり個別の音源ごとに作詞・作曲とは別の権利が併存している。これを「原盤権」などと俗称する。 例えば、誰かがディランの曲を歌うのなら、既存の音源は使ってないので、JASRACなどの許可だけでできる。他方、ディラン自身の音源を配信に使いたいなら、JASRACなどの許可もいるが、同時に原盤権も関わるのでレコード会社の許可もいるのが普通なのだ。 Q7 はあ、なるほど複雑ですね。 A7 ちょっと図にしてみよう。まあもちろん、曲を利用する側にとっては音楽著作権を誰が持つかが重要なので、今回の売却でCMやシンクロ利用が一気に広がる可能性は、やはりある。その答えは、風の中だ。 言うと思いました。
福井 健策