女性政治家が増えない日本を変える 若手議員たちの挑戦
人口の約半分は女性ですが、国会における女性の割合はわずか10%ほど。男女比がこれほど偏っていたら、すべての人にとって平等な社会になるには、まだまだ時間がかかりそうです。では、女性の意見を政治の場に届ける「女性議員」を増やすために、私たちは投票以外でどのような関わり合いができるのでしょうか。一般社団法人「WOMAN SHIFT」代表理事で台東区議会議員の本目さよさんと、同団体理事で目黒区議会議員のたぞえ麻友さんに話を聞きました。 ●議員になることを断念する女性を減らしたい 日経xwoman編集部(以下、略) WOMAN SHIFTは2015年の統一地方選挙の直後に結成されたとのことですが、団体が立ち上がった背景を教えていただけますか。 本目さよ(以下、本目) 私自身、11年に初当選して以来、「女性の声を政治に届けるためには女性議員を増やす必要がある」と考えていました。とはいえ、政治に興味のある女性に「政治家にならないか」と伝えても、前向きな人は多くありません。たとえ議員になったとしても、ライフステージやキャリアとの兼ね合いで、2期目の立候補を断念する人も多くいます。 私も、2期目として臨んだ15年の統一地方選挙では「ビジネスの道に戻ったほうがいいのでは」という思いがあり、立候補するかとても悩みました。最終的に出馬を決めたのは、他の女性議員たちの存在が大きいです。同じような悩みを抱えている彼女たちと考えを共有し合ったことが大きな励みになったのです。 私と同様の悩みで議員になることを断念する女性を減らしたい。そう思い、当選後の15年に政治家を目指す女性や現職の女性議員をサポートするWOMAN SHIFTを立ち上げました。
女性議員の大半がハラスメントを経験 「若さを売りにしている」と言われたことも
―― やはり、女性が政治家になることも、政治家を続けることもハードルが高いんですね。 本目 その理由には、大きく3つの課題があります。1つ目は政治家というキャリアの選択肢がほぼ存在せず、「そもそもなろうと思わないこと」、2つ目は特殊な世界のため、「なり方が分からないこと」、最後は、なったとしてもさまざまなハードルがあり「やめてしまうこと」が挙げられます。 たぞえ麻友(以下、たぞえ) 私は32歳のときに初当選したのですが、当時、目黒区議会議員の女性議員の中では最年少だったこともあり、「若さと女を売りにしている」と言われたことがありました。また、調査対象の女性議員の87%が「同僚議員からハラスメントを受けたことがある」と回答したデータもあります。このような精神的にネガティブな要素があることも、女性議員が増えない理由の一つだと考えています。 ―― WOMAN SHIFTでは、これらの課題に対して、どのような取り組みをしているのでしょうか。 本目 女性議員になりたい人を増やすために大学や企業と提携してイベントを開催したり、実務内容を知ってもらうために、議員を目指す若手女性向けに講座を開催したり、現職の女性議員が悩みを相談し合えるクローズドコミュニティを立ち上げたりしました。 また、19年からは女性の声をより政治家に届けるため、現職の地方議員のもとで子育て中の母親がインターンをする「ママの議員インターン」というプロジェクトを始動しました。 22年5月時点で、「ママの議員インターン」を受け入れた議員は男女合わせて累計15人おり、66人のママがインターンを経験しています。このプロジェクトを通じて、子育てをしている女性が政治に興味を持つだけでなく、彼女たちの抱える課題を議員が肌で感じ、政治の場に反映してくれるようになることを期待しています。