【チャンピオンズC】「結果はついてくる」リョーケンファーム1期生にかけられた夢と期待とは…
今年こそチャンピオンズC制覇を-。JBCクラシックでJpn1初制覇を果たしたウィルソンテソーロ(牡5、小手川)は、了徳寺健二オーナーが18年に開場したリョーケンファーム(北海道日高町)の1期生。幼少期を知る田村直人厩舎長兼総括(47)に話を聞いた。 ◇ ◇ ◇ JBCクラシックが行われた今月4日、佐賀から1400キロ以上離れた日高で、従業員15人の牧場が歓喜にわいた。ウィルソンテソーロの晴れ姿を、田村厩舎長兼総括はテレビ越しに誇った。「歯がゆいレースが続いていたので、やっとG1を一つ勝てたな、と。やっぱり喜びが違いますね。勝ち方を見ると覚醒したのかなと思います」。国内外のG1、7度目の挑戦で大願成就。「ウィルソンが牧場にいた頃を知らない従業員も、次は自分の担当馬でG1を勝ちたいと、やる気は間違いなく高まっています」と声を弾ませた。 いきなり巡り合った。現在57頭を有す繁殖牝馬も開場時は13頭。競走馬登録された9頭のうちの1頭がウィルソンだった。「生まれてすぐに誰が見てもいい馬だと思いました」。成長段階で馬体が崩れる馬も少なくない。ただ、「生まれた時に形のいい馬は1度崩れても馬体が戻ってくる。ウィルソンは幼少期からあか抜けていて、今もいい馬体ですよね」と素材が違った。 「世界一の馬を作る」-。夢を原動力に東京ドーム約21個分の広大な土地を一から整備。「はじめは頭数も少なくて、草地をぜいたくに使えてすごいなと思いましたね(笑い)。昔から優等生でオンのイメージがないくらい。人に従順でした」と、北の大地がダイヤの原石を磨いた。放牧中の走りは抜群に素軽かったが、デビューから芝で3戦未勝利。「なんで芝で走らなかったんだろうと、今でも思うくらいです」と能力の高さを信じて疑わない。 頭脳の良さが高い操縦性を、身体能力の高さが力強い走りを生んだ。幼少期から光る素質が開花し、牧場の看板馬へと羽ばたいた。母チェストケローズはウィルソンを出産後、蹄葉炎(ていようえん)でこの世を去った。残された産駒は1頭のみ。オーナー、牧場のJRA・G1初勝利はもちろん、将来は種牡馬としても期待がかかる。「あれだけの馬。とにかくけがなく走ってくれれば、結果はついてくると思います」。900キロ以上離れた尾張の地へ、夢を託す。【桑原幹久】