横浜市、敬老パスの対象拡大へ コミュニティーバスなど地域交通も対象、免許返納者も優遇
横浜市は来年、70歳以上の市民が市営地下鉄や路線バスなどを利用できる「敬老特別乗車証(敬老パス)」の仕組みを見直す。コミュニティーバスなどの地域交通対象に加え、それら事業者の支援にも乗り出す。公共交通が不便な地域の高齢者の外出を促すことで介護予防につなげ、「行政コストの削減を図る」(山中竹春市長)狙いだ。 ■免許返納者も優遇 敬老パスは、所得などに応じて最大2万500円で取得すれば地下鉄やバス、金沢シーサイドラインが1年間乗り放題になる。利用対象の拡大により、コミュニティーバスや乗り合いタクシー、予約に応じて運行する「オンデマンド交通」といった地域交通も、半額程度の割引運賃で利用できるようにする。 また、来年4月以降に運転免許証を返納した75歳以上の人は敬老パスを3年間無料で交付する。さらに、介護予防の効果を検証するため、要介護リスクが高い75歳以上の人を対象に行うモニター調査の協力者へもパスを無料で交付する。 地域交通の事業者に対しては、車両費や燃料費などを補助し、公共交通機関が乏しいエリアでの事業展開を後押しする。来年3月に条例を改正し、いずれも10月に実施する。 ■公平性も健康も 制度見直しの趣旨として市が挙げるのは「公平性の担保」だ。 敬老パスは対象者約80万人の5割強に当たる約41万人が取得しているが、地域によって交付率やパスの利用回数に差が生じていることが市の調査で判明。公共交通機関が充実しているエリアほど利用が多く、駅やバス停から遠いエリアほど利用が少ない傾向が明らかになった。 また、パスの保有者は外出の回数が多く、要介護認定を受ける割合が低いこともわかった。 そこで、地域交通の充実によって公平性を担保するとともに、高齢者の健康増進を図ることが有益だと判断した。 ■公約は先送りか 市が敬老パスの事業費として投じている事業費は、年間約100億円。一連の追加施策により、約4億8千万円(事業者支援1億円▽免許返納者2億4千万円▽モニター調査1億4千万円)の支出増を見込む。 地域交通の充実をめぐっては、駅から800メートル、バス停から300メートル以上離れたエリアを「交通空白地帯」と定義し、事業者の支援や新規参入の促進に取り組む。空白地帯は市内に100カ所以上あり、まず4年間で半減させることを目指す。