[本田泰人の眼]どれだけ相手の嫌がるプレーができたか。小川航基にスタメンを任せるのはリスクがある。スーパーサブが最善手だろう
当たり負けしない遠藤。球際でも強い
1トップ以外で気になった点は、3バックの右サイドだ。 インドネシア戦は橋岡大樹、中国戦は瀬古歩夢が入った。橋岡は不安定な守備が目立ち、攻撃でもビルドアップで正確性を欠いた。一方、瀬古は前線へ精度の高いパスを出せないものの、守備は無難にこなせていた。 とはいえ、小川同様、瀬古もポジション争いの序列を覆すほどの出来ではなく、谷口が戻ればベンチを温めることになるだろう。 田中碧もしかり。中盤での不用意なボールロストでピンチを招くなど、攻守の安定感を見れば、レギュラーの守田英正のほうが上だ。 守備の選手は、どれだけ相手に嫌なプレーをさせないか。攻撃の選手は、どれだけ相手の嫌がるプレーをするか。この評価基準で考えると、守備は遠藤航、攻撃は久保や伊東があてはまる。 特に、遠藤は中国のプレッシャーを物ともしないし、当たり負けしない。球際でも強い。スペースを埋めては、チームをオーガナイズしていた。遠藤がいなければ違った結果になっていたはずだ。 攻撃では久保の安定感が際立った。試合後、久保は「とにかく(ピッチが)狭かった。欧州のチームよりも(プレスが)速いイメージがあった」などと話していたが、そのなかでも対応し、狭いスペースに顔を出しては伊東とのワンツーやスルーパスなど“違い”を作り続けた。 精度の高いキックでコーナーキックから1アシストを決めたのも評価できる。また、伊東は安定の運動量と正確なキックで小川のゴールをアシストしている。 繰り返しになるが、小川の場合、得点以外の場面でどれだけ相手の嫌がるプレーができたか。もちろんフォワードは点を取ってなんぼのポジションだが、サッカーはチームスポーツだ。メッシやエムバペのようなスーパーなフォワード以外は、味方に合わせるプレーができないフォワードにスタメンを任せるのはリスクがある。 野球のようにDH制度があれば、セットプレーの時だけピッチに立ってプレーできるが...。現実問題、最終予選以降を見据えれば、小川はスーパーサブとして起用するのがチームにとっての最善手ではないか。彼の得点力は、オプションの一つとして計算できることは、この11月シリーズで証明された。さらなるレベルアップに期待したい。 ――◆――◆―― 本田泰人氏の中国戦の採点は以下のとおり。 ▼先発 GK 1鈴木彩艶 6.0 DF 4板倉 滉 6.0 DF 16町田浩樹 6.0 DF 22瀬古歩夢 6.0 MF 6遠藤 航 7.5MOM MF 8南野拓実 5.5 MF 13中村敬斗 5.5 MF 14伊東純也 6.6 MF 17田中 碧 5.5 MF 20久保建英 7.0 FW 19小川航基 6.5 ▼途中出場 MF 15鎌田大地 6.0 MF 7三笘 薫 6.0 DF 3橋岡大樹 6.0 FW 9古橋亨梧 6.0 FW 11前田大然 6.0 森保一監督 6.0 ※採点は10点満点で「6」を及第点とし、「0.5」刻みで評価。 ※MOM=この試合のマン・オブ・ザ・マッチ 【著者プロフィール】 本田泰人(ほんだ・やすと)/1969年6月25日生まれ、福岡県出身。帝京高―本田技研―鹿島。日本代表29試合・1得点。J1通算328試合・4得点。現役時代は鹿島のキャプテンを務め、強烈なリーダーシップとハードなプレースタイルで“常勝軍団”の礎を築く。2000年の三冠など多くのタイトル獲得に貢献した。2006年の引退後は、解説者や指導者として幅広く活動中。スポーツ振興団体『FOOT FIELD JAPAN』代表。
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