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“昭和おじさん社会”は終わる!? 『半沢直樹』が描いた古い男性像と新しい女性像を振り返る

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リアルサウンド

前作から最も進化していたポイントは女性描写

 また、前作から最も進化していたポイントは女性描写だ。シーズン1では半沢の妻・花(上戸彩)が原作小説からアレンジされ、常に夫を明るく励ますチアガール的存在に。その変更については「原作と違うし、あんな妻、現実には存在しない」という批判も出た。他には壇蜜演じるホステスや倍賞美津子演じる経営者が登場し、「聖女/悪女」の二元論に陥っているようにも見えたが、今回はその中間にいるリアルな女性像に近づいていた。  元キャスターで白スーツの白井国土交通大臣(江口のりこ)は登場時、国家権力を振りかざし半沢たち銀行員を見下して従わせようとし、「悪女」カテゴリーに入りそうだったが、最終回で箕部の不正を見逃せず半沢たちと共に反旗を翻す決意をした。白井は権力を志向して政界に入ったものの、私腹を肥やすつもりはなかったのだ。また、国民人気の高い政治家としてその信頼に応えたいという良心も持っていた。ラスト、政党政治の呪縛を断ち切り無所属でやり直す決意をした白井のところに、“聖女”の花が駆けつけるという終わり方も印象的だった。ちなみに白井が最後に改心するというのは、原作にはないオリジナルの展開で、原作では白井は単純に失脚するのみなのだが、自信過剰で愚かな女で終わらなかったのは、うまい脚色だったと思う。江口のりこは近年、ドラマファンの間では存在感を増していたが、日曜劇場の池井戸潤原作シリーズには初出演。その起用もハマって、リアルな女性に見えた。  ただ、それまでの白井が上から目線で嫌味があり、「女はこれだから」と思われがちなキャラクターだったのも確か。それとは対照的だったのが、開発投資銀行の谷川次長(西田尚美)だ。常にフラットで感情に左右されることなく仕事を進める谷川こそ、組織で働くリアルな女性の姿だ。むしろ「鉄の女」という特別な存在であるように印象づけるキャッチフレーズは必要なかったのではないか。谷川はクールなだけでなく、半沢や森山(賀来賢人)をはじめビジネスパートナーには情を持って接する温かさもあり、政府には逆らえない組織をなんとか改革したいと願う熱さも持つ。演じた西田尚美のもつ現代性がマッチして、共感できる女性像になっていた。西田は「凪のお暇」(TBS系)では整形を繰り返す母親というトリッキーな役柄だったが、本作では抑えた芝居で巧みに谷川を演じてみせた。  そんなふうに2020年に合わせてアップデートした部分もありつつ、メインで展開したのは、前作から変わらず、ビジネスマンたちの権力争い。立場を利用し不正をする男がいて、半沢が仲間たちと共にそのやり口を調べ、証拠を集めて糾弾する。それでも相手は「証拠を出せ!」と悪あがきするが、会議室のスクリーンにばーんと証拠を映し出されてついに観念する。そんな“プレゼン型悪者退治”とでも呼ぶべきパターンが続いた。そこで排除されるのは、会社の金を横領するおじさん、コネで利益供与をするおじさん、どんな手を使ってでも出世しようとするおじさんなど。もちろんパワハラは日常茶飯事だし、半沢も含め、とにかくみんな大声で怒鳴る。まるで“昭和おじさん”の見本市のような内容になっていた。果たしてこれは視聴者にとって「令和の今、ほとんどの企業ではこんなことはありえないよ」と無邪気に笑い飛ばせる過去のことなのか、それとも「いや、これに近いことはうちの会社でもある」と深刻に受け止める現在進行形の状況なのか。それは個人の置かれた立場によって違うだろう。  ただ、社会全体を見れば、政界がその最たるものであるように、まだまだおじさんと呼ばれる中高年男性がトップの座を占めている。できることなら、ドラマに出てきたようなダメな“昭和おじさん”には『半沢直樹』の完結とともに「さらばだ」と会社を去ってほしい。最終回まで見終わった感想はそれだった。もしもこの先、続編が作られるなら、若き頭取・半沢直樹の下で開かれる男女半々の役員会議が見てみたい。

小田慶子

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