【ラグビー】東京五輪へ向け、お役御免とはなりたくない。セブンズ愛する32歳の坂井「恩返しがしたい」。
セブンズは15人制に比べ、番狂わせが起こりやすいと言われる。相手の調子も関係してくるが、こちらの戦術がハマれば世界に勝てるチャンスがある、というころが大きな魅力のひとつだと坂井は言う。 「そうはいっても簡単に勝てる世界ではない。いくら練習しても、世界の舞台に行ったらコテンパンになって帰ってきたということもいっぱい経験してきました。リオでは、ニュージーランドだけに照準を絞って大会に臨んだと言っても過言ではないくらい徹底的に準備をしました。それが本当におもしろいようにハマって勝ちましたが、あれだけ準備をしたにもかかわらず、点差にしたら2点差(14-12)だったことを考えると、世界に勝つにはまだまだ差があるということも同時に頭に入れなければならないと思っています。昨季ワールドシリーズを振り返っても、まだまだ差はあると僕はとらえています」 東京オリンピックでのメダル獲得へ向け、やることはたくさんあるし、時間もたっぷりある。 チームはいま、最もこだわっているのはベーシックな部分だ。セブンズはパスミスひとつ、ディフェンスの立ち位置ひとつで失点につながるスポーツ。1年延期になったことをプラスにとらえて、基本のところをもう一度見つめなおして取り組んでいる。 坂井は、個人としてはディフェンスが永遠の課題とし、力をつけていきたいと語った。 もちろん、成長した部分はある。リオのときと比べたら、キックオフでコンテストできるチャンスが増えてきたと坂井は実感している。 「当時はコンテストできる人が桑水流さん一択でしたが、いまは190センチを超える選手が増えています。セブンズのセットプレーでいちばん大事なのはキックオフ。もう一回マイボールになるかならないかで試合は大きく変わるので、ここは非常に大きな変化だと思っています」
セブンズが好き。自らを奮い立たせるものは何かと訊かれ、坂井はそう答えた。 「セブンズにかかわって11年。協力してくれる家族に感謝しています。身長は172センチであまり大きくないですが、けがをしない体に産んでくれた親にも感謝したいと思います。そして、織機(豊田自動織機)の一員ですので、トップリーグよりもセブンズを優先させていただいている会社にも感謝しています。とにかく、何がモチベーションかというと、僕はセブンズが好きだという一点に尽きる。当然、シャトルズにも成長させてもらいましたが、セブンズがよりいっそう自分を成長させてくれたと思っています」 早稲田大学の3年生だったころ、レギュラーではなかったにもかかわらず、セブンズから声をかけてもらい、ラグビー人生が大きく広がった。2012年4月に男子セブンズ日本代表のヘッドコーチに就任した瀬川智広氏(2016リオオリンピック後に退任)は、当時23歳だった坂井にキャプテンを任せ、期待された青年は国際舞台で経験を積み重ねていった。 「いろんなつらい思いもいい思いもしながら、32歳までやってこれたのはセブンズのおかげだと思っています。僕のモチベーションというのは、セブンズが好きだということと、セブンズに対して恩返しがしたい、という思いだけです」 リオのときと同じなら、東京オリンピックで男子ラグビー日本代表の最終登録メンバーに選ばれるのは12人だ。坂井を含め、候補選手たちは熱い思いをもってチャレンジをしている。