漬けものや野菜、果物など地域食材を活用!挑戦し続ける長野・伊那発「イナデイズブルーイング」
伊那谷のランビックを醸す日をめざして
いつか冨成さんの大好きなベルギーの酸っぱいビール「ランビック」のようなビールを造りたいと話す。 ランビックとはベルギーの首都ブリュッセル南部、ゼンヌ川流域 で醸造されるビールのみに使用される呼称である。そのわけは、この地域にしかいない野生酵母によって醸されたビールだから。 基本的にブルワリーは酵母メーカーから購入した酵母を使う。最近は酵母を自家培養するマイクロブルワリーが増えているが、多くは買い付ける。 野生酵母は買うことができない。その土地、その醸造所の建物に棲みついている菌であり、その環境下でしか生息しないからだ。 「この土地の小麦と大麦と、この土地に含まれる乳酸菌と酵母を使って伊那谷版ランビックを造ってみたいですね。ブルワリーの窓を全開にして」と冨成さんは夢を語る。
信州大学とコラボしてスモールビジネスの実験にも
伊那谷では小麦や大麦の生産がさかんだ。有機栽培を行なう生産者も多い。イナデイズブルーイングも自らホップ畑を整備している。 イナデイズブルーイングは林業ともリンクしている。伊那市はその8割を森林が占め、林業も盛んだ。イナデイズブルーイングには「森の座」というペールエールがあるが、これは缶に赤松の経木がラベルに封じ込まれた 非常に珍しい缶ビールだ。地元の山の管理をしているNPOと赤松を使った家具製作会社とのコラボビールである。 母校信州大学と連携できるのもイナデイズブルーイングのアドバンテージだ。たとえばブルワリーから出る麦芽カスは、家畜の研究をしている研究室の牛の飼料に利用されている。規格外の野菜や果物を捨てない。作業工程で出るカスを捨てない。何でもなるべくムダにしない、そうしたことが当たり前のシステムを冨成さんはビール造りを通して考えている。 まだ構想段階ではあるが、ビールの生産工程で出る大量のCO2の再利用についても大学と話し合っている。CO2については、大手メーカーはリサイクル設備を進め、カーボンゼロのビール造りに取り組んでいるが、この点、小規模のブルワリーではまだまだ追いつかない。多額の設備費用も問題になる。しかし冨成さんはこう話す。 「小さくてもできることはあると思うので、地域の技術や大学の研究を活用させてもらいながらCO2のリサイクルを進めていきたい」 今後の目標については、「豊かな自然があり、森があり、農産物がある。その地の利と、私の母校との人脈をフル活用して新しいコトにチャレンジしていきたい。スモールビジネスでいい。この地域をもっと知ってもらえるように活動していきたい」と語る。 大学の研究者にとっても、イナデイズブルーイングのブルワリーが小さな実験室になる。地域密着型の研究チームとブルワリーが連携して地域の課題に取り組み、その土地なりの解決策を見出す。小さいからこそできることと、小さくてもやるべきことと。伊那の谷のイナデイズブルーイングのビールから、それらが見えてくる。 In a daze Brewing 長野県伊那市西箕輪8004-1 私が書きました! ライター 佐藤恵菜 ビール好きライター。日本全国ブルワリー巡りをするのが夢。ビーパルネットでは天文記事にも関わる。@DIMEでも仕事中。
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