漬けものや野菜、果物など地域食材を活用!挑戦し続ける長野・伊那発「イナデイズブルーイング」
地域資源を活用するならクラフトビール
こうして冨成さんはブルワーになることにした。食品メーカーを退職。地元愛知県の「HYAPPA BREWS 」で醸造を学び、岡崎にあるHYAPPA BREWS 直営のタップルーム「Izakaya Ja Nai!!(イザカヤジャナイ)」でも働いた。小さな店ゆえ、醸造以外の店の運営にかかわる様々なことを実地に学ぶことができたと振り返る。 2018年春。伊那に移住した。学生時代を過ごした場所だから、もちろんよく知っている。学生時代からの知り合いもいる。農産物が豊かで水がおいしいことも身を以て知っていた。西箕輪にあった元りんごジュースの加工所 を借り上げ、ブルワリーを創業した。2019年 1月に醸造開始。自家製ピザがおいしいタップルームもオープンした。 規格外の野菜や果物、地域の資源をどんどん活用しよう! 少量ならできるはず……。 「生産者さんのためにもなるしフードロスにもなる、と思っていたのですが、そんな簡単な話ではありませんでした。愛知県では大規模化している生産者が多かったのですが、伊那谷の農家さんは有機野菜に力を入れる方もいれば、家庭菜園のようにこぢんまりした農家さんもいて、規模も目的もいろいろ。それぞれに抱えている課題も違います」 醸造やタップルーム運営は経験してきても、生産者と直接、仕入れのやりとりをするのは初めてのこと。どんな作物でも、規格外品はいつも一定量、出るわけではない。一方でビールの仕込みに必要な量は決まっている。仕入れ価格の折り合いがつかないこともある。規格外を商品化する難しさは小さなブルワリーにもあったのだ。 創業から6年目。地域資源を活かしたいという想いは、少しずつ地域の生産者らに伝わっている。そして同じ思いを共有できる人たちがつくる野菜や果物、地域の文化に根づいた農産物を、冨成さんはビール造りに取り入れている。 地域の人々と冨成さんをつなぐ場になったのが、タップルームだ。おもしろいビール屋ができたと近所の人たちが飲みに来たし、生産者たちも訪ねて来た。ブルーベリーの規格外が○○キロほどあるんだけれど使えませんか? こんな野菜が採れるんだけどビールにどう? タップルームがそのままビールのショールームになり、営業の場になっている。